1.臨床検体を用いた解析 上部尿路上皮癌271症例から組織マイクロアレイを作成し、PD-L1および免疫微小環境に関連するマーカーの免疫組織化学染色を網羅的に行った。各マーカーの陽性細胞の密度を画像解析ソフトを用いて定量的に測定し、生存解析を行った。さらに、宿主側の免疫あるいは全身状態を示す重要な因子の一つである血小板に着目し、術前の血中血小板数によって腫瘍PD-L1発現が予後に及ぼす影響が異なるかどうか検討した。 生存解析の結果、マクロファージや制御性T細胞、細胞傷害性T細胞、活性化したT細胞の浸潤が多い群では無転移生存期間と全生存期間が有意に短かった。多変量解析では、腫瘍関連マクロファージの浸潤が多いことが独立した予後不良因子であった。腫瘍PD-L1発現陽性例は31例 (11%) であり、無転移生存期間と全生存期間が有意に短かった。興味深いことに、血小板数が中央値よりも低い群では腫瘍PD-L1発現は予後に関連しないが、血小板数が高い群では腫瘍PD-L1陽性例は予後不良であり、両者の相互作用が示唆された。
2.細胞株での検討 臨床検体での解析結果を踏まえ、尿路上皮癌の細胞株を用いて血小板と共培養し、共培養により遊走浸潤能が増加した細胞株の一つであるJONについて、siRNA を用いて腫瘍PD-L1発現をノックダウンしたうえで血小板と共培養し、遊走浸潤能が変化するかどうかを検討した。その結果、血小板非存在下ではPD-L1発現は遊走浸潤能に影響しないものの、血小板存在下ではPD-L1発現が保たれている群の方が、ノックダウンした群と比較して遊走浸潤能が高く、血小板と腫瘍PD-L1発現が相乗的に遊走浸潤能を増加させることが示唆された。
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