子宮頸部の腫瘍性病変の多くはHPV感染に関連して発生するが、細胞診検査やHPVテストによるスクリーニングにより、多くが早期診断され治療されるようになった。しかし、HPV感染とは関連なく発生する腺系腫瘍性病変は、有効なスクリーニング法がないために初期で発見されることが少なく、予後不良である。これまでの研究により、この腫瘍の多くは胃型粘液を産生し、初期病変である分葉状頸管腺過形成(LEGH)が低異型度から高異型度に変化し、さらに悪性化して浸潤能を獲得すると、胃型腺癌となることが分かっている。ただし、LEGHや胃型腺癌の超高分化型として知られる最小偏騎癌(MDA)は、異型性に乏しいので、形態のみでは診断が難しいことがある。 本研究では、これらの子宮頸部の胃型粘液産生腫瘍における、腫瘍の悪性化と、αGlcNAc修飾の変化との関連について、ヒト検体を用いた免疫染色により検討した。 検討の結果、初期病変であるLEGHにおいては、低異型度LEGHではMUC6とαGlcNAcの共発現を高率に認めるが、高異型度LEGHになると、MUC6発現は維持されるものの、αGlcNAcの発現が減弱・消失する例が有意に増えることが明らかになった。MDAを含む胃型腺癌では、αGlcNAcの発現消失がさらに高率に認められた。 この研究結果から、これまで検討してきた、胃や膵臓の腫瘍と同様に、子宮頸部においても、胃型粘液産生腫瘍では、腫瘍細胞の悪性化にともなって、腫瘍細胞が産生する幽門腺型粘液の糖鎖修飾のみが徐々に減弱・消失していくことが明らかになった。また、形態での診断が難しい、LEGHやMDAの診断に際しては、MUC6とαGlcNAcの免疫染色を行い、αGlcNAcの発現低下・消失を確認することで、腫瘍の悪性度が進んでいることを判断する一助となる可能性が示された。
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