研究実績の概要 |
悪性リンパ腫・軟部腫瘍を含む悪性腫瘍では、しばしば、染色体転座の結果、腫瘍特異的融合遺伝子が生じ、それを検出することで確定診断が可能である。しかし、特に軟部腫瘍などでは、通常のホルマリン固定標本作成後に、融合遺伝子産物の確認が必要となり、RNAが保存された材料の確保に困難が生じる場合が少なくない。従来は、FISH法,あるいは、パラフィン標本から抽出したRNAを材料としてのRT-PCRが試みられることが多かったが、蛍光顕微鏡、PCR装置、電気泳動装置を含め、一般病理検査室への普及には難点があった。また、安定した結果を得るためには技術的経験も必要である。このキメラ分子の存在を、それぞれの抗体を用いて検出する方法、および、タンパク質相互を、細胞を溶解することなく、直接に病理組織標本で検出するin situ proximal ligation assayの開発を検討した。 本年度は特にTMEM207分子が癌組織で過剰発現し、直接結合することで、腫瘍抑制因子であるWW domain-containing oxidoreductase (WWOX)の機能を障害していることを、in situ proximal ligation assayによる2分子間相互の可視化に成功し報告した。 すなわち、従来、腫瘍促進に関係するといわれていたTMEM207の病理学的な機能が、そのPPPXYモチーフが、WWOXのWWドメインに結合することで、行われること、すなわち、この結合を阻害することで、新たな分子標的治療が可能になることを示唆する結果を得た。 今回、我々は口腔内癌で、この2分子間相互作用を検討したが、大腸癌、乳癌などでも、in situ PLA法による結合を証明した。
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