これまでの研究(平成26-28年度科研費)から、我々は、新規pericyteマーカーとして同定したmyosin1B(MYO1B)と平滑筋マーカーであるhigh molecular weight caldesmon(hCD)を組み合わせることで、ホルマリン固定パラフィン包埋ヒト皮膚組織材料の血管壁細胞はMYO1B+hCD-であるpericyte、MYO1B-hCD+である血管平滑筋細胞、MYO1B+hCD+である両者の中間的な血管壁細胞に分類できることを見出した。 次に、ヒト皮膚の血管周囲性腫瘍54例(血管平滑筋腫 28例、グロームス腫瘍 23例、筋周皮腫 3例)における腫瘍細胞のpericyteへの分化を検討した。MYO1BとhCDの免疫染色を行い各々の成分を半定量的に評価した。その結果、血管平滑筋腫は血管平滑筋細胞の特徴を有していること(MYO1B-hCD+)、グロームス腫瘍はpericyteとvSMCsの中間の特徴を有する細胞(MYO1B+hCD+)から主に構成されていること、筋周皮腫の中には形態学的に血管平滑筋腫と鑑別が難しいものが存在するが、免疫組織化学的にも血管平滑筋腫に近い特徴を有するものが存在することを見出した。PericyteすなわちMYO1B+hCD-の細胞のみから構成される腫瘍は54例中には認められなかった。 そこで、次の段階として、MYO1B+hCD-の細胞のみから構成される真のpericyte腫瘍が存在するのか検討を行うことにした。 また、鼻領域にはperivascular myoid phenotypeを示すsinonasal glomangiopericytomaと呼ばれる腫瘍がある。この腫瘍に関しても、MYO1BとhCDを用いてpericyteへの分化を検討する予定である。
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