研究実績の概要 |
これまでに唾液腺腺様嚢胞癌の特異的な遺伝子転座として, MYB-NFIB, MYBL1-NFIB融合遺伝子が報告されているが, これらの持つ臨床病理学的意義や詳細な遺伝子変異は不明である. 申請者は33例の唾液腺腺様嚢胞癌をFISH法によって解析した. その結果, 29例(88%)の唾液腺腺様嚢胞癌は, MYB, MYBL1, NFIBのいずれかの遺伝子分離を認めた. その後の遺伝子融合検索により, 唾液腺腺様嚢胞癌はMYB-NFIB, MYB-X, MYBL1-NFIB, MYBL1-X, NFIB-X, 遺伝子異常陰性の6つのグループに分類できることが明らかとなった. MYB/MYBL1遺伝子分離陽性を示す腺様嚢胞癌とその他の症例を比較したところ, 前者は顕微鏡的断端陽性とMYC蛋白陽性と有意な相関関係を示した. MYC蛋白陽性は, 予後解析において不良無病生存と有意な相関関係を示した. これらのことから, (1)鑑別困難な症例の診断では, FISH法による遺伝子解析が有用であること (2)本腫瘍は遺伝子学的に6種類に分類できること (3)MYB/MYBL1遺伝子分離症例は予後不良因子となり得ることが示唆された (Fujii (Tsuda) K, et al. Histopathology, 2017). 上記の遺伝子異常以外に, EGFR, RAS family, PIK3CA, BRAF, AKT1の遺伝子異常の有無を高感度な特異解析法であるSNaPshotを用いて検討した. その結果, EGFR経路の変異やRAS遺伝子変異陽性症例は, 陰性症例と比較して, より短い無病生存期間および全生存期間を示すことが明らかとなった (Saida K, et al. Oncotarget, 2018).
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今後の研究の推進方策 |
今後もさらに多くの唾液腺腺様嚢胞癌症例を蒐集する予定である. 本腫瘍におけるMYB, MYBL1, NFIB, EGFR, RAS, PIK3CA, BRAF< AKT1などの遺伝子異常の解析を行っていき, 関連学会での発表や論文化を目指していく.
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