研究実績の概要 |
和歌山医大で切除された皮膚および粘膜の悪性黒色腫の病理組織標本をレビューし、それらのパラフィンブロックから腫瘍の代表的な部分を専用のアレイヤーを使って抜き出し、tissue microarray (TMA) を作製した。そして、そのTMAを使って adipophilin の免疫染色および既知の悪性黒色腫の免疫染色マーカーとされる HMB45, Ki67, p53, p16 などの免疫染色を施行した。次に、超高感度 mRNA-ISH を施行できる RNAscope のキットを購入し、adipophilin の mRNA-ISH を施行した。結果として、一部の悪性黒色腫で adipophilin が mRNA レベルで高発現している事が分かり、adipophilin の免疫染色結果が偽陽性でない事が裏付けされた。また、転移巣で特に adipophilin の発現が高い傾向が見られた。今後、病理組織型、BRAF変異の有無、ステージ、患者予後など、複数の因子とadipophilin の発現の関連性について検索し、特に本邦に多い acral melanoma に焦点を当てつつ、adipophilin が他の免疫染色との組み合わせによってメラノサイト系腫瘍の良悪を判別する為のマーカーとして使えるかどうか、患者の予後マーカーとして使えるかどうかについて検索していく。Adipophilin は細胞質内の脂肪滴をコーティングしている蛋白質であり、悪性黒色腫における脂質代謝亢進の病理学的意義の解明につながると考えている。
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