研究課題/領域番号 |
17K15655
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
辻川 華子 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (30528170)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 肝細胞癌 / サブクラス分類 |
研究実績の概要 |
本研究では肝細胞癌サブクラス分類における悪性度の差の解明と診断への応用という目的に向け、 (1)シグナル伝達異常に関する分子機構の解明、(2)浸潤転移能に関与するEMT関連分子の発現と悪性度との関連を検討し、さらに(1)(2)の結果を関連付けた(3) 新たなサブクラス分類の構築に向けた臨床病理学的有用性の検討を行う。 当該年度(平成29年度)においては、シグナル伝達異常に関する分子機構を解明するため、ERK分子に着目し、ERK/pERKの免疫染色を行うため、抗体の特異性確認を行った。具体的には、まず肝細胞癌標本を用いて、ERK/pERKの免疫化学染色の条件検討を行った。その後、肝細胞癌細胞株8種に対し、ERKリン酸化阻害剤を用いて、ERKリン酸化状態を確認(ウエスタンブロット)し、ERK分子およびリン酸化ERK分子(pERK)に対する抗体を用い、セルブロックから作成した切片に対して免疫化学染色を行った。また肝細胞癌パネルの標本でも免疫化学染色を行った。 さらに新たなサブクラス分類の構築に向けた臨床病理学的有用性の検討に向け、肝癌パネルで構造判定や線維化測定に用いるHE染色および線維を評価するEVG(Elastica van Gieson)染色、銀染色、マロリー染色標本を作製、顕微鏡観察を用いて腫瘍内線維化評価(%)、線維の増生様式や間質との関連を検討した。また標本をデジタルスライド化し、線維化定量を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
予定よりも肝細胞癌細胞株、肝細胞癌パネルにおける染色および線維化の評価に時間がかかり、進捗が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
(1)ERK/pERK抗体を用い肝細胞癌パネルを染色する。核内染色とpERK染色の感度を検討し、ERK活性化の評価を行う。またERK活性化に関与する既知の因子(HGF,EGF等)を用い、肝細胞癌細胞株における細胞増殖効果を検討する。またウェスタンブロット法を用いてERKリン酸化を検討する。 (2) 浸潤転移能に関与するEMT関連分子の発現と悪性度との関連を検討するため、TGF-βとEMTの関連を調べる。具体的にはEMT関連分子発現プラスミドを肝癌細胞株に導入することにより、EMT関連分子を強制発現させ、細胞形態および運動能の変化を検討することを予定している。またEMT関連分子のsiRNAを合成し肝癌細胞株に導入することにより、EMT関連分子の発現を抑制させ、細胞形態および運動能の変化を検討する。同時にEMT関連分子と転移・再発の関連の検討のため、選択したEMT関連分子の肝細胞癌切除検体における免疫組織化学的発現を検討する。 (3) 新たなサブクラス分類の構築に向けた臨床病理学的有用性の検討に向けては、上記(1)(2)の結果を鑑み、肝細胞癌パネルにおける結果を既存の肝細胞癌サブクラス分類と比較検討し、サブクラスの悪性度を反映する機序を検討する。肝細胞癌サブクラス分類に関連付けた結果と線維化を含む臨床病理学的因子との関連、検査データや予後を含む臨床情報との相関解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定よりも肝細胞癌株と肝細胞癌パネルの染色結果の評価に時間が有したため、細胞株を使用した実験や免疫化学組織染色に予定していた経費の使用が少なくなった。
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