研究実績の概要 |
本研究では肝細胞癌サブクラス分類における悪性度の差の解明と診断への応用という目的に向け、 (1)シグナル伝達異常に関する分子機構の解明、(2)浸潤転移能に関与するEMT関連分子の発現と 性度との関連を検討し、さらに(1)(2)の結果を関連付けて(3)新たなサブクラス分類の構築に向けた臨床病理学的有用性の討を行う計画である。 該当年度(令和2年度)においては、令和1年度に論文として報告した結果を学会報告し、また今までの結果をさらに既存の肝細胞癌サブクラス分類と比較し、悪性度を反映する機序と合わせて検討した。肝細胞癌の腫瘍内コラーゲンおよびエラスチン線維の定量解析およびその結果と臨床病理放射線学的特徴の検討においては、我々の報告したCK19、SALL4、EpCAMのBiliary/stem cell markerが陽性のB/S groupに属するHCCで線維量が高い一方、βcateninnの核陽性像およびGSのびまん性陽性像を呈するW/B groupに属するHCCでは線維量が少ないことがわかった。線維成分に富むHCCは臨床病理放射線学的に特徴的な一群として認識されることが示された。またExtracellular signal-regulated kinase (ERK)活性化肝細胞癌はAFP高値で低分化であり、vp/im(+)、CK19, SALL4, c-MET, Ki-67高発現を呈し、ERK活性化が予後因子の一つであることがわかり、B/S groupに多く見られた。上記は腫瘍悪性度に関連すると思われるが、定量解析およびERK/pERK抗体の染色・評価は日常病理診断と合わせて常に行うためには、追加検討や機器の導入が必要な可能性がある。今後、非腫瘍肝の組織像と合わせてサブクラス分類を特徴づける有用な因子の検索を引き続き行い、より有用な病理診断への応用を目指す。
|