研究実績の概要 |
初年度(H29年度)では、新規TERRA定量系の確立を目標とした。各種がん細胞株のCell-free分画のエクソソームから抽出したRNAを材料としてリアルタイムPCRを用いてTERRAの定量を実施し、細胞内でのTERRAの発現を反映しているかどうか、正常細胞における発現とどのように異なるかを検証した。白血病細胞株(U937, HL-60, K562)、悪性リンパ腫細胞株(SUDHL4, Raji)、多発性骨髄腫細胞株(RPMI8226, KMS-11)、肺癌細胞株(SCT-1, RERF-LC-AI)、卵巣癌細胞株(Kuramochi)などの細胞株を用いて解析を進めた。また、対照としては健康人由来の骨髄間質細胞(LONZA社より購入し現在保有しているもの)、EBV transformed B cell lineを用いた。各細胞株の培養上清よりExoQuick(System Biosciences)を用いてエクソソーム分画を分離した。TERRA-PCRではサブテロメア領域をターゲットとしたプライマーを用いて、定量リアルタイムPCRを行った。細胞内TERRAはβ-actinで、エクソソーム内TERRAはスパイクコントロールとして用いたmiR-159aでノーマライズを行った。がんの種類によってTERRAの発現パターンは様々であったが、例えば白血病病由来細胞株では、細胞内TERRAは低発現なのに対し、エクソソーム内TERRAは高発現していた。正常細胞(骨髄間質細胞、EBV transformed B cell line)と比較して、多発性骨髄腫由来細胞株では細胞内TERRAもエクソソーム内TERRAも高発現であり、得られたCt値の結果からも安定した検出が可能であることが示された。 よって、次年度は上記の解析系を用いて、学内の倫理委員会の承認を得てバイオバンク内で保有している多発性骨髄腫患者血清を用いて検証する予定である。
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