研究課題
初年度では、各腫瘍由来細胞株を用いて、安定したアッセイ系の確立、エクソソームTERRA診断に適した癌の種類の選別を行なった。がんの種類によってTERRAの発現パターンは様々であったが、得られたCt値の結果からも安定した検出が可能であることが示された。よって、本年度は上記の解析系を用いて、学内の倫理委員会の承認を得てバイオバンク内で保有している骨髄異形成症候群(MDS)および多発性骨髄腫(MM)患者の臨床サンプルを用いて血漿中エクソソームTERRAの発現について検証した。血液内科学分野スタッフの協力を得てバイオバンクに保存してあるMDS患者およびMM患者由来の血漿サンプルに加え、新規症例についても血漿を回収した。体液診断としての対照は健康者血液の血漿を用いた。健常者25名におけるエクソソーム TERRAの発現量を1として、MDS患者22名(low risk患者:6名、high risk患者:8名、post AML/MDS患者:8名)の血漿中エクソソーム TERRAの発現量を比較したところ、low risk患者(p=0.007)、high risk患者(p=0.003)、post AML/MDS患者(p<0.0001)ともに有意に発現が上昇していた。特にpost AML/MDS患者では平均値にして30倍に著増していることが明らかとなった。また、MMの前がん病態とされるMGUS患者11名およびMM患者36名での比較では、MM患者血清中のエクソソームTERRAが健常者と比較して顕著に上昇していた(p=0.0015)。一方で、MGUS患者では健常者と有意な差は見られなかった。以上のことより、MDS患者およびMM患者においては血漿中エクソソームTERRAを定量してバイオマーカーにできることが示唆された。今後は、固形腫瘍における本法の体液診断としての実用化の可能性についても考慮していく。
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