研究課題/領域番号 |
17K15657
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
河本 啓介 新潟大学, 医歯学総合病院, 助教 (60791481)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 顆粒球肉腫 / CXCR4 / CCR7 |
研究実績の概要 |
本研究においては顆粒球肉腫の症例蓄積をおこない、さらなる詳細な臨床データと病理組織像、免疫組織化学による表面抗原の発現パターンの検討をおこなった。近年、悪性腫瘍において、組織における腫瘍の形成には、免疫チェックポイント分子が大きく寄与していることが最新の報告で示唆されている。顆粒球肉腫は急性骨髄性白血病の芽球が組織において腫瘤を形成する特殊な病態であり、顆粒球肉腫の形成は腫瘍自体の異常によるものか、それとも特殊な腫瘍微小環境が重要なのかも不明である。以上より、今回の顆粒球肉腫におけるprogrammed death ligand 1 (PD-L1)とprogrammed death 1 (PD-1)の発現についても検討をおこない、腫瘍微小環境におけるPD-L1の発現が予後不良因子であることがわかった。(Kawamoto et al. Hematological Oncology. 2018. In press) 同一症例において孤発性発症のMSと診断後、無治療のうちにAMLに進展した症例を対象として孤発性発症の芽球と末梢血芽球の網羅的遺伝子発現解析(Gene expression profiling: GEP)の比較検討により、髄外腫瘤の芽球に特徴的な遺伝子発現の抽出をおこなった。その結果、孤発性MSからAMLへと進展した症例について、MS病変の芽球と末梢血芽球に対してoligo-array comparative genomic hybridization (aCGH) による網羅的遺伝子発現解析(Gene expression profiling: GEP)を施行し、CCR7 pathway とCXCR4 pathwayが関わっていることが示唆された。今後、CCR7pathwayとCXCR4pathwayの遺伝子変異解析を順次おこない、検討していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
組織における腫瘍の形成には免疫チェックポイント分子も寄与していることが最新の報告で示唆されており、今回の顆粒球肉腫におけるprogrammed death ligand 1 (PD-L1)とprogrammed death 1 (PD-1)の発現についても検討をおこなっており、PD-L1を発現する腫瘍はほとんどなく、腫瘍微小環境によって顆粒球肉腫が形成されているわけでなく、やはり腫瘍自体の特性が関係していることが示唆された。(Kawamoto et al. Hematological Oncology. 2018. In press) 以上より、同一症例において孤発性発症のMSと診断後、無治療のうちにAMLに進展した症例を対象として孤発性発症の芽球と末梢血芽球の網羅的遺伝子発現解析(GEP)の比較検討をおこなった。その結果、孤発性MSからAMLへと進展した3症例について、MS病変の芽球と末梢血芽球に対してoligo-array comparative genomic hybridization (aCGH) による網羅的遺伝子発現解析(Gene expression profiling: GEP)を施行し、CCR7 pathway とCXCR4 pathwayが関わっていることが示唆された。 CCR7やCXCR4は細胞接着因子として、他の造血器腫瘍でも非常に重要な分子であることが報告されており、顆粒球肉腫でも同様に組織での腫瘤形成に重要であることが示唆されたことがわかったことにより、今後これらのPathwayについて重点的に研究をしていくことで新たな顆粒球肉腫の分子生物学的背景に迫ることができると考えられたからである。
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今後の研究の推進方策 |
顆粒球肉腫の形成は腫瘍自体の異常によるものか、それとも特殊な腫瘍微小環境が重要なのか不明であったが、今回の免疫チェックポイント分子の発現解析により、やはり腫瘍自体の異常が重要であることが示唆され、これをHematological Oncology誌に受理された。以上より、今後は孤発性発症の芽球と末梢血芽球における遺伝子変異解析の比較が必要と考えられ、解析をおこなうことを予定している。具体的な手順は以下の通りである。 (1) 多数のMS症例のFFPE(パラフィン包埋切片)検体からDNAを抽出する。 (2) 以上のDNAを用いて、CXCR4 pathwayとCCR7 pathwayに関わる遺伝子の変異解析をおこなう。 (3) 久留米大学病理学教室ではMSをともなわないAML症例の検体も多く存在するため、(1)(2)の研究手順により候補遺伝子・蛋白がAML髄外発症の要因に強く関係が考えられるものであれば、さらに上記で抽出した候補遺伝子の蛋白発現がde novo AMLでは低頻度であること、遺伝子変異などの異常をともなわないことの証明を目指す。 以上について孤発性発症の芽球と末梢血芽球のCXCR4 pathwayやCCR7 pathwayの変異の頻度や変異遺伝子の比較により、顆粒球肉腫形成の分子生物学的背景について明らかにしていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
顆粒球肉腫形成の分子生物学的背景について、腫瘍自体の遺伝子変異や遺伝子発現の異常が重要か、または腫瘍微小環境によるものが重要かを検索する必要がありました。そこで、近年腫瘍微小環境の免疫チェックポイント分子の重要性が報告されているため、はじめにこちらを検討することとしました。さらに蓄積された凍結標本が保存されている顆粒球肉腫症例が少数であったこと、さらに一度に多数の症例で同一の遺伝子変異解析をおこなうことが実験において効率的と考えられたため、次年度に蓄積した多数の症例で遺伝子変異をおこなうことによって次年度に多くの予算を繰り越しさせていただきました。 次年度は、多数例で遺伝子変異解析をおこなう必要があり、多くの予算を使用させていただきたいと思います。
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