多施設より得られたメソトレキサート関連リンパ増殖性疾患(methotrexate-associated lymphoproliferative disorder: MTX-LPD)患者の臨床検体(ホルマリン固定パラフィン包埋切片)および臨床情報を統計学的解析し、特徴的な組織像に対応した臨床所見を見出し、MTX-LPDの各組織型の診断基準を確立した。さらに頻度の高い①反応性型(RH)②多形型(Poly-LPD)③びまん性大細胞B細胞リンパ腫(DLBCL)型④古典的ホジキンリンパ腫型(CHL)症例の合計219例に対して統計学的解析を行った結果、各組織型間で多数の臨床病理学的特徴およびメソトレセート中止後の病勢が有意に異なっていた(各組織間全てP<0.05)。また各組織型のMTX中止後の病勢予測因子として、単変量解析にてPoly-LPDでは好酸球浸潤、高齢(>70歳)、広範囲の壊死、CHLでは形質細胞浸潤、多変量解析にてDLBCLではIPI(国際予後指標)およびEBV感染(EBV in situ hybridization陽性)をそれぞれ同定した。DLBCLのサブタイプ別の解析ではT細胞組織球豊富型LBCL様の病型がMTX中止後の病勢で予後良好な傾向を示した。一方これら4病型の全生存期間はいずれの病型間において有意差を認めなかった。これらの結果をAmerican Journal of Surgical Pathology 誌に発表した。現在、悪性リンパ腫では組織型に沿った遺伝子異常解析がなされ、それに沿う分子標的薬、また標準的治療が確立されつつある。本研究は現在まで発表されたMTX-LPDに関連する論文の中で最大規模の症例数を対象とした解析であり、今後は本研究で確立した組織分類を基に、MTX―LPDの標準治療の確立および遺伝子異常解析へと展開が期待される。尚、確立したMTX-LPDの各組織型の分子学的特徴を明らかにするため、補助事業期間終了後もホルマリン固定パラフィン包埋切片に対しての遺伝子発現解析を継続する事となった。
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