国立がん研究センター脳腫瘍連携研究分野と協働して研究活動を行った。当研究室は2012年にiGCT Consortiumを設立して全国的に頭蓋内胚細胞腫瘍(iGCT)検体を収集しており、300例以上のホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)サンプルが蓄積されている。 HE染色標本を病理組織形態学的に詳細に観察し、頭蓋内胚細胞腫のうち胚腫約100例に対して、浸潤するリンパ球量について基礎的な検討を行い、分子生物学的に予測される腫瘍含有率との比較、免疫関連分子の発現状態や臨床情報との比較検討を行い、論文発表した(Takami et al. Neuropathol Appl Neurobiol. 2020 46(2):111-124.)。 また、104検体のDNAメチル化マイクロアレイ解析結果(Illumina 450k)に対し、統計解析ソフトであるRを用いてコピー数解析のための独自のパイプラインを構築し、染色体腕ごとや遺伝子ごとのコピー数解析を行った。頭蓋外の胚細胞腫瘍において高頻度に認められる12p gainがiGCTにおいてもしばしば認められる [36.6% (30/82)] ことを確認し、さらに12p gainが組織学的悪性度と強く関連し、予後不良因子となることを示した。これを受けて、病理組織学的にFISHによるコピー数解析を行い、各組織型ごとにコピー数解析を行い、12p gainの有無は組織型によらず共通していることが明らかとなった。以上から、12p gainはiGCTの腫瘍発生の初期段階に認められる異常であることが示唆され、腫瘍発生機序の理解のために重要な知見が得られた(論文準備中)。
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