研究課題/領域番号 |
17K15661
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
顧 兆悌 東北大学, 医学系研究科, 非常勤講師 (40451520)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 癌 / ゲノム / 遺伝子 / 発現制御 / 膵癌 / IRX4 / DNAメチル化 / アポトーシス |
研究実績の概要 |
本研究では、膵癌の高度メチル化遺伝子として同定したIRX4(Iroquois homeobox 4)遺伝子について、1)IRX4発現回復の癌細胞に与える影響、2)癌化におけるIRX4メチル化や発現変化の詳細な解析により膵癌形成過程におけるIRX4高度メチル化の役割を明らかにすることを目的とした。 平成29年度は、膵癌細胞株でIRX4発現による細胞増殖能の変化を見るため、高度メチル化によりIRX4発現がまったく見られない2つの膵癌細胞株(PK-1およびPK-9)を用い、薬剤投与によりIRX4蛋白を発現誘導する細胞株を作製することにした。そのため、まず、PK1、PK9膵癌細胞株にTetリプレッサー(TetR)発現コンストラクトを導入し、次に、IRX4遺伝子をTetオペレーター(TetO2)下流に挿入したDNAコンストラクトを導入した。PK1、PK9それぞれ2株ずつIRX4発現誘導細胞株を作製した後、これらの細胞株にテトラサイクリン(tet)を投与し、IRX4を発現誘導した時の細胞増殖能をアラマブルーアッセイで、細胞周期における変化をフローサイトメトリーで検討した。その結果、合計4種のPK-1、PK-9膵癌細胞株はすべてIRX4発現誘導により細胞増殖が著しく阻害されるという結果を得た。さらに、フローサイトメーターを用いた解析により、PK-1、PK-9膵癌細胞株ではIRX4発現誘導がsubG1分画の著しい増加を引き起こすことが明らかとなった。これらの結果は、膵癌におけるIRX4の高度メチル化、発現抑制は癌の増殖に大きな影響を与えていることを強く示唆するものと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
膵癌細胞株PK-1、PK-9でIRX4の発現誘導系を作製することに成功し、細胞株を用いた癌の様々な特徴に対するIRX4発現の効果を解析することが可能になったため。
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今後の研究の推進方策 |
IRX4発現誘導によって膵癌細胞株のコロニー形成能、細胞増殖能などに変化が見られた。これらの違いの原因を探るため、IRX4発現の有無による遺伝子発現の変化をマイクロアレイで解析する。PK-1、PK-9のTetリプレッサー発現細胞株(親株)とそれらの細胞株から派生するIRX4発現誘導細胞株のテトラサイクリン投与前後の細胞からRNAを調製し、ラベル化cRNAのマイクロアレイスライドへのハイブリダイゼーションにより転写因子IRX4の下流に位置する遺伝子を網羅的に探索する。癌細胞の特性に影響を及ぼすと考えられる重要な遺伝子に関しては、IRX4発現との相関を調べるため、定量RT-PCR法、ウエスタンブロット法によりRNAレベル、蛋白レベルでの解析をおこなう。また、これら下流遺伝子の発現変化が実際に膵癌の臨床検体でも見られるかどうかマイクロダイセクションによって得られた検体で確認する。これらの解析によりIRX4がどのような細胞内経路で機能しているのか明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品購入に際し、キャンペーンにより若干の余剰が生じたため。 細胞培養等で使用する消耗品に使用する予定である。
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