研究実績の概要 |
オートファジーは損傷した細胞内小器官を選択的に分解し、細胞や組織の恒常性を維持する機構であり、このはたらきが弱まると神経変性疾患や炎症性疾患などが引き起こされることが知られている。オートファジーに不全が起こり、疾患が引き起こされる段階的な過程において、細胞外レベルが顕著に変動するタンパク質は機能的な重要性だけでなく、関連疾患群の有効なバイオマーカーとなり得ることから、その網羅的解析が求められていた。 そこで本研究では免疫担当細胞が細胞外の微粒子刺激による細胞内小器官損傷に応じて細胞外へ放出されるタンパク質群をプロテオミックアプローチで比較定量解析した。結果、1,000以上の細胞外タンパク質を同定した。この中から刺激に応じて細胞外レベルが顕著に増加する因子群について、その分子機能やバイオマーカーとしての有効性などを更に検証していった。この結果、オートファジー不全マウス由来細胞において、刺激後の細胞外レベルがさらに増加する細胞外タンパク質を複数同定した。さらに同定因子の一つはオートファジー不全マウスを用いた疾患モデルにおいても尿中、血中濃度がコントロール群と比較して増加することを示した。当該因子をノックダウンすると、刺激性微粒子刺激に応じた炎症性サイトカインIL-1betaやIL-1alphaの産生量が増加したことから、当該因子が炎症性サイトカイン産生を負に制御していることも示唆された。また、当該因子は刺激性微粒子を貪食したマクロファージにおいて、損傷したファゴソーム膜に局在しており、オートファジー基質タンパク質との共局在も示唆されたことから、当該因子がオートファジー関連疾患群の創薬ターゲットとしても期待される重要な因子であると結論付けた。
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