研究課題
膵癌は早期発見が難しく、効果的な治療法にも乏しい。私たちは以前より、ヒトの癌病変を忠実に再現したハムスター膵癌モデルを用いて、発がんメカニズムの解明を行ってきた。禁煙、アレルギー疾患に罹患した患者には、膵癌の発症リスクが低いという報告がされた。本研究では、抗アレルギー薬である、ロイコトリエン拮抗薬(0.2mg/kg/day) (Mont)、選択的H1受容体拮抗薬(0.1mg/kg/day)(Levo)、選択的β2アドレナリン受容体作動薬(0.2mg/kg/day)(Bamb)の膵発がん化学予防効果を検討するために、6週齢雌のシリアンゴールデンハムスターにBOP(10mg/kg)を4回皮下投与後、飲水投与を行った。体重、臓器重量(肝臓、腎臓)、血清データ(中性脂肪、総コレステロール、LDL・HDLコレステロール、アミラーゼ)に各群有意差はみられなかった。膵癌の発生頻度(個体あたりの発生数)は無処置群では42%(0.5)に対しMont群は25%(0.25)、Levo群は42%(0.5)、Bamb群は50%(0.58)であった。またヒト膵癌細胞株MiaPaCaⅡとPanc1でWST-1 assayをそれぞれの薬剤に対し100uMまで調べた所、Mont投与時は濃度依存性の細胞増殖抑制を認めたが、Bamb、Levo投与時は明らかな細胞増殖抑制効果は見られなかった。以上よりin vivo, in vitroからMontに膵癌化学予防効果があると予測されることが分かったが、in vivoにおいては当初予測されていた腫瘍形成数より少なかったためMontによる有意な低下は認められなかった。
3: やや遅れている
今回の動物実験の結果をもとに、組織や機能解析を行う予定であったが、無処置群の腫瘍形成が、以前私たちが行った実験結果(Kato A, KatoH, Oncotarget 2015)より低かったためMont群での腫瘍抑制効果に低下傾向は見られたが有意ではなかった。そのため、現在Montに絞って、高用量群(0.4mg/kg/day)、中用量群(0.2mg/kg/day)、低用量群(0.1mg/kg/day)に分け再度ハムスターの実験を行っている。そのため、当初の一度で完結すると思われていた動物実験のやり直しを行っているため、予定に対しやや遅れていると判断される。
再度行っているハムスターの実験は、最初の実験からすぐに移行できたため、平成30年度4月で終了する予定である。平成30年度はその組織をもとにした解析を行っていくが、より推進的に行うために腫瘍関連マクロファージの免疫染色などの必要な染色の条件設定を、以前の動物実験で作成した検体で行っていく。さらに、予定通り、in vitroでの実験を進め、ある程度の増殖に関わる因子を見つけ出すために半網羅的なリン酸化関連タンパクの解析などを加えて行っていく。さらに、動物実験で得られた検体で網羅的な解析を行うことにより、in vitroとin vivoの両面から戦略的に研究を進める予定である。
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