研究課題
本研究では、脳梗塞モデルマウスを用いて、脳梗塞発症後2週目以降(慢性期:ヒトで言えばリハビリ期)の脳組織を観察したところ、獲得免疫を担うリンパ球の一種であるT細胞が予想外に多く集積していることを発見した。T細胞のリンパ組織からの遊走を阻害するFTY720(フィンゴリモド)を投与すると運動機能を指標とした神経症状が悪化することから、脳内のT細胞は神経症状の改善あるいは悪化の防止に役立っていることが示唆された。さらに、T細胞の中でも制御性T細胞(Treg)が非常に多く集積していることを発見した。脳梗塞発症後、慢性期にTregを除去すると、神経症状が悪化した。また逆にT細胞が存在しないマウスにTregを移植すると神経症状が改善した。これらの結果から脳内に集積するTreg(脳Treg)こそが脳梗塞慢性期の神経症状の改善に役立っていることが明らかになった。最近、脳Tregのように脂肪組織、筋肉、皮膚など体の様々な臓器にTregが存在することが報告されている。これらは組織Tregと呼ばれ炎症のみならず代謝や損傷組織の再生や修復に重要な役割を果たすことが報告されている。しかし、正常な状態では脳内にT細胞はほとんど存在しないため、これまで脳内でのTregの役割を解明した報告は少ない。本研究から脳梗塞後、脳内に集積するTregも組織Tregに似た性質を示し、他の組織Tregと同様にIL-2やIL-33によって増殖することがわかった。
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