ミクログリアは中枢神経系の免疫担当細胞であり、炎症が根底にある中枢神経疾患において、ミクログリアの機能制御は極めて重要である。申請者は、ミクログリアに特異的な分化制御機構を明らかにするため、DNAマイクロアレイ解析を行い、他の組織常在マクロファージと比較しミクログリアに特異的に発現している遺伝子、EBF3を同定した。EBF3の役割を明らかにするため、多発性硬化症動物モデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)に対しEBF3-siRNAを投与したところ、症状が増悪したことから中枢神経炎症に関わる因子と考えた。本研究ではミクログリアの分化誘導および機能におけるEBF3の役割を明らかにすることを目的とする。 大脳、および脊髄からミクログリアを単離しEBF3の発現を解析したところ、大脳と比較して脊髄ミクログリアにおいてEBF3が高発現していることが明らかとなった。この結果から、EBF3が中枢神経系の部位により、異なる役割を担っていることが示唆された。ミクログリア機能の部位による異同については、まだ未解明の部分が多く残されており、ミクログリア機能の新たな側面の解明につながる結果と考えられた。当初計画していたコンディショナルノックアウトマウスに問題があることが明らかとなったため、当初の予定とは別のCreリコンビナーゼ導入マウスを入手、新たにEBF3コンディショナルノックアウトマウスを作成し、病理学的にミクログリア数、および形態の解析を行ったが、コントロールマウスと比較して明らかな変化は認められなかった。今後炎症状態におけるEBF3の機能を解析するため、作成したコンディショナルノックアウトマウスに対し、実験的自己免疫性脳脊髄炎モデル(EAE)を誘導し臨床症状並びに病理所見を解析することで、EBF3が中枢神経炎症に与える影響を解析する。
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