本研究は、ヒトの腫瘍の中でも最も悪性度が高い脳腫瘍である膠芽腫 (グリオブラストーマ) において、EGFRおよびその下流に存在するmTORC2信号が、悪性腫瘍の発生や進展に重要と考えられる鉄の代謝を制御していることを明らかにした。mTORC2による鉄代謝の制御は、ヒストンアセチル化で代表されるエピジェネティクス変化を介した機構であることが分かった。mTORC2による鉄代謝制御機構に介入することで、腫瘍細胞の鉄の利用や細胞増殖を有意に抑制することが可能であった。いまだ有効な治療法がない膠芽腫において、mTORC2や鉄代謝を標的とする新規治療戦略が有望な治療戦略の一つとなり得る可能性が示された。
|