研究課題
マラリア原虫のミトコンドリア(mt)DNAは他の生物と比較して特殊な構造をもっており、mtDNAを鋳型としたRNAの転写およびタンパク質の翻訳機構については未解明な部分が多い。これはmtDNAに対する組換え技術の確立が困難であることが大きな原因である。本研究課題では、1) mtDNAを欠損したマラリア原虫rho0細胞を作出し、2) 人工的に作製したmtDNAを導入する、ことによりマラリア原虫mtDNAの機能性の解明を目指した。本年度はrho0細胞作成に用いる原虫種(供試原虫:げっ歯類マラリア原虫3種およびヒトマラリア原虫)の検討を行った。その結果、げっ歯類マラリア原虫P. bergheiへの酵母DHODH遺伝子(yDHODH)組換えには成功したが、他のげっ歯類マラリア原虫では同様の方法を用いた組換えが困難であった。エチジウムブロマイド(EtBr)暴露によるrho0細胞作成の検討を行うため、野生型およびyDHODH組換え原虫を用いて、24時間のex vivo培養における添加EtBrの濃度(0~50 μg/mL)の検討を行った。EtBrに対する感受性は両原虫株で大きな差異はなく、5~10 μg/mLのEtBr濃度で原虫は致死となることがわかった。また、EtBrに暴露し増殖したすべての原虫でmtDNAが消失する現象は認められなかった。P. falciparumを用いたin vitro培養においては、EtBr濃度10 ng/mLで増殖が抑制されることがわかり、P. bergheiよりも感受性が高いことが示唆された。以上の実験結果より24時間という短時間のEtBrの濃度では、mtDNAを消失させることが難しいことが予測されたため、今後は、本研究成果をもとにP. falciparumのin vitro培養系を用いたEtBrの低濃度・長時間暴露を検討しマラリア原虫rho0細胞の作成を目指す。
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