研究課題
Trypanosoma bruceiが宿主血流中で生存するために必須であるミトコンドリア内膜に存在する末端酸化酵素Trypanosome alternative oxidase (TAO)と、その特異的阻害剤アスコフラノン(AF)との相互作用、TAOの生化学的解析や生理的意義を解明してきた。AFは微生物由来のメロテルペノイド化合物である。本研究では、AF生合成の全容解明と、全合成経路でのAF前駆体の抗トリパノソーマ活性など寄生虫学的評価を行い、基礎研究に基づいた薬剤開発基盤の確立を目的としている。AF生合成経路の解明と、生合成経路の解明で明らかになるAF生合成前駆体の薬理学的評価を行うことで、AF関連天然物群とTAOの相互作用を解明する。AF産生菌のゲノム解析から得られた情報を用いて、AF生合成に関わる8つの遺伝子から構成される遺伝子群を同定できた。この予測生合成経路とその中間代謝物の化学構造と、8つの遺伝子群の情報に基づいて、遺伝子再構成法のアプローチにより、AF生合成経路中の中間体をすべて同定でき、これまでにすべての生合成経路が解明できた。AFだけではなく、その副産物であるアスコクロリンも含めた生合成経路が明らかとなった。生合成経路は、共通の前駆体から特異な酸化酵素とテルペン環化酵素によって二つの生合成系が分岐する経路だった。さらに、この中間代謝物がイリシコリンAという天然物であることがわかり、これも強い抗トリパノソーマ活性を有することがわかった。最終年度はこれら生合成経路の中間代謝物の寄生虫学的な評価を実施、薬剤開発に応用できるかどうかの検証を行った。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (3件)
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