研究課題
侵襲性カンジダ症の原因菌 Candida glabrata は、強酸(pH2)耐性であり、胃を通過して腸管に常在し病原性を発揮する。しかしC. glabrataにおける強酸耐性機構の分子メカニズムは全く分かっていない。申請者はこれまでに、独自のC. glabrata遺伝子欠損株を用いたスクリーニングにより、転写制御因子RIM101が強酸耐性機構に必須であることを新たに見出した。本研究では、さらにRIM101の上流および下流で機能する因子を網羅的解析により同定し、強酸耐性機構の全貌を明らかにするとともに、強酸耐性機構の病原性への関与を評価する。RIM101経路はこれまでに、パン酵母やC. albicansにおいてアルカリへの耐性に関わる経路として研究が行われてきたが、今回申請者はC. glabrataにおいて、初めてRIM101経路がアルカリ耐性に加えて強酸耐性に関わることを明らかにした。パン酵母やC. albicansで報告されていない新規の構成因子が存在する可能性も示している。C. glabrataにおける強酸耐性の研究は本申請研究が初めてであり、他菌種においてもRIM101経路が酸耐性に関わる報告は例がなく、C. glabrata以外の感染症研究にも大いに影響を与えることが予想される。本年は「上流:RIM101を制御する強酸耐性遺伝子の特定」について研究を行い、結果を得た。約3000株の欠損株を異なるpHで培養し、pH2においてWTに比べて生育の遅延した株を、スクリーニングした。前年度のRNAseqの結果と併せて解析を行い、RIM101遺伝子を上流で制御する遺伝子群の候補を得た。
3: やや遅れている
RIM101の上流遺伝子について、OD測定を行い、パン酵母とは一部異なる経路をとることが予測された。しかし、これらの遺伝子の破壊により実際にRIM101の限定分解が起こらなくなることを証明するために、HAタグをつけたRIM101を組み込んだ株の作成が必要であるが、この株の作成に失敗しており、現在検討中である。
今年度中にHAタグ-RIM101の株を作成し、ウエスタンブロッティングによりRIM101を制御する上流遺伝子の特定をおこなう。また、これまで行っていない新規センサータンパクの検討も行う予定である。
研究の遅延により、予定していた実験が出来なかったため。次年度は本年度分の遅延した研究に加え、予定していた研究も進めていく予定である。
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Cell Microbiol.
巻: 20(3) ページ: e12802.
10.1111/cmi.12802