研究課題
本研究では、マダニによる病原体の維持機構を分子レベルで解明することを最終目標に、まずはマダニ媒介性感染症病原体であるボレリア菌のマダニ体内における維持機構を明らかにすることを目的としている。具体的には、マダニ媒介性病原体の1つである回帰熱群ボレリア菌のゲノム上に特異的に見いだされ、菌がマダニ感染中に特に発現が上昇している複数の遺伝子群の機能解析を行うことを目的としている。本研究では、他のボレリア群と比較し、未吸血マダニの全身に感染していることが明らかとなっている回帰熱群ボレリア菌と、逆に腸管に限局して感染しているライム病群ボレリア菌を比較することで解析を行なっている。本年度は、これまでの研究により明らかとなった、マダニ体内で発現が上昇している回帰熱群ボレリアのみが保有する21遺伝子ついて、ライム病群ボレリアの1種であるB. burgdorferi B31株へ遺伝子導入した。形質転換に用いた親株のB. burgdorferi B31株は回帰熱群ボレリアを媒介する軟ダニ体内に接種後数週間で排除され、一方、回帰熱群ボレリアであるB.duttoniiは数週間後もマダニ体内、特に体腔液中に生存していることが分かっている。この違いを利用し、得られた形質転換株の一部について、軟ダニ体内に人工的に接種し、その生存の有無を解析した。本年度中に6株まで解析が終了し、今後順次残りの株を進めて行く。同時に、複数の遺伝子をランダムに導入した株を用いて、軟ダニを使ったin vivoスクリーニングも現在行なっている。
2: おおむね順調に進展している
計画通り、形質転換株を得ることができており、マダニへの接種実験も順調に進めている。
平成29年度に引き続き、平成30年度もマダニへの接種実験を行う。また、複数遺伝子を導入した株についてもスクリーニングと責任遺伝子の同定を行う。形質が現れた候補遺伝子が得られた場合は、発現状態をリアルタイムRT-PCRにて定量し、その動態を解析する予定である。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 2件)
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