研究課題
本研究は、in vitro では菌の生育には影響を与えないが、生体内(組織や血液中などの感染部位)において菌の発育および増殖に大きな影響を与える因子(=in vivo bacterial essential factor; vivoEF)に注目し以下を解析することを目的としている。1) 新たなスクリーニング系の構築により、vivoEF 阻害剤の候補となる化合物を明らかにする。2) 1)で候補となった化合物の、vivoEF 阻害による多剤耐性菌制御への関与を明らかにする。3) 2)で候補となった化合物の、vivoEF 阻害部位を明らかにする。4) 3)が同定された化合物が、生体内で確かに効果を有するかをマウス感染系で明らかにする。平成29年度の研究で、北大創薬センター及び東京大学創薬機構の保有する約21万化合物のスクリーニングを完了し、約100の新規敗血症治療・予防薬の候補となるvivoEF阻害剤を得た。これらの多くは既存の抗菌薬の骨格となるような化学構造は保持しておらず、新規の標的分子をターゲットにしている可能性が示唆された。またそのいくつかを複数の多剤耐性菌種を用いてvivoEF阻害作用を評価したところ、一部は多菌種にvivoEF阻害作用を示したが、菌種特異的にvivoEF阻害作用を示している化合物も認められた。一部の化合物においては耐性株出現試験をおこなったが、いずれも耐性株は出現しなかった。これらの化合物を有効利用することにより、感染部位特異的かつ広範囲または菌種特異的な新規抗菌性治療薬・予防薬の開発に期待がもてる。現在、本研究内容に関する特許を出願中である。
1: 当初の計画以上に進展している
当初の実験計画通り平成29年度に予定されていた、敗血症に対するvivoEF阻害化合物の1次および2次スクリンーングを終了している。当初の計画ではスクーニングにSDSの使用を考えていたが、実際には、より生体内での活性を模擬するため、血清の仕様に変更しvivoEF阻害剤のスクリーニングを行なった。いくつかの化合物においては当初平成30年度に予定していた複数の菌種および複数の多剤耐性臨床分離株でのvivoEF効果の評価をすでに終えている。また、いくつかの化合物においては平成30年度に予定していたRNA-Seqやbacteriophageアッセイなどにより、標的となるvivoEFを予測することに成功している。
平成30年度では、得られた化合物について引き続きvivoEF阻害剤の作用部位の同定に関する研究を進める。また、リード化合物となるような化合物を選定し、これらについての高次評価(ADME、細胞毒性、およびマウス感染モデルにおけるvivoEF阻害作用の評価、既存抗菌薬との併用時におけるin vitroおよびin vivoでの評価)を行う予定である。また、当初より早期に化合物スクリーニングが可能と判明したので、尿や呼吸器などのvivoEF阻害剤のスクリーニングも検討していく。
次年度での使用に加算させる予定のため。次年度では、計画にある通り物品費(主に消耗品)、旅費(主に学会参加の移動費)、その他(論文の英文校閲費等)に使用する。
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