研究課題
本研究では、『in vitroでは菌の生育・増殖には影響を与えないが、生体内(組織や血液内などの感染部位)において菌の発育・増殖に大きな影響を与える因子』を標的にし、これまでの新規抗菌性物質の検索手法(=in vitroで菌体の発育・増殖を抑える化合物を検索)とは異なる視点で、今後より問題視される多剤耐性菌の制御に関する研究(本因子を阻害する化合物の検索、その阻害部位の同定、生体内での効果を明らかにする)を行った。平成29年度では、北大創薬センター及び東京大学創薬機構の保有する約21万化合物のスクリーニングを完了し、約100の新規敗血症治療・予防薬の候補となるvivoEF阻害剤を得た。これらの多くは既存の抗菌薬の骨格となるような化学構造は保持しておらず、新規の標的分子をターゲットにしている可能性が示唆された。平成30年度では、得られた約100のvivoEF阻害剤の濃度依存性を評価し、その候補を31化合物に絞り込んだ。血管内皮細胞を用いた細胞毒性試験では、約半数が50uMでも毒性がないまたは極めて低かった。一部の化合物は医薬品として承認されているが、抗菌活性を示すことが知られていないものであった。RNA-Seqにより、一部の化合物が細菌の莢膜合成関連遺伝子の発現を抑制することを明らかとし、これらの化合物刺激により莢膜の産生量が低下することを明らかとした。マウスを用いた全身感染系で評価すると、Wild-typeの菌株では100%の致死を示したのに対し、本標的遺伝子欠損株では全てのマウスが観察期間である1週間を経過しても生存した。以上のことから、本研究でのスクリーングにより、これまで抗菌活性が知られたいない多くの化合物にvivoEF阻害作用があることを明らかとし、その標的である因子は明らかに生体内でのみ菌の発育・増殖に影響を与える因子(vivoEF)であることを明らかにした。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件)
Antimicrobial Agents and Chemotherapy
巻: 62 ページ: e00864-18
10.1128/AAC.00864-18
巻: 62 ページ: AAC.00851-18
10.1128/AAC.00851-18