平成29年度に肺炎球菌の宿主間伝播におけるボトルネック効果を調節する宿主側の因子として、病原微生物の構成因子を認識するToll様受容体(TLR)の刺激についてそれぞれのアゴニストを使用し調査した。日齢4に肺炎球菌臨床分離株(血清型6A)を経鼻接種し、保菌モデルを作成した。次に日齢8から日齢11まで、それぞれのTLRアゴニストを連日経鼻投与した。日齢12における鼻咽腔保菌量に有意な差を認めなかった一方で、TLR3、TLR7/8およびTLR9のアゴニスト刺激が宿主鼻咽腔から肺炎球菌の排菌を促進することが判明した。 平成30年度はTLR3ノックアウトマウス、TLR7ノックアウトマウス、TLR9ノックアウトマウスを導入し、肺炎球菌の鼻咽腔保菌及び宿主外への排菌量について野生型マウスとの比較検討を行った。日齢4に肺炎球菌臨床分離株(血清型6A)を経鼻接種し、日齢12における鼻咽腔保菌量を検討したところ、野生型マウスと比較して有意な変化を認めなかった。一方、TLR3およびTLR9ノックアウトマウスでは日齢8から日齢12における排菌量の有意な低下を認めた。 以上の研究結果より、TLR3、TLR7、TLR9による刺激は宿主鼻咽腔の保菌量に影響を及ぼさないが、宿主体外への排菌量を増加させることが証明された。これらのTLRsは微生物の核酸を認識する自然免疫であり、微生物の宿主間伝播と密接な関係があることが示唆される。
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