研究課題/領域番号 |
17K15692
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
佐藤 義則 帝京大学, 医学部, 助教 (90455402)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | アシネトバクター / 日和見感染 / 免疫応答 / 細菌 / 病原性 |
研究実績の概要 |
高齢宿主におけるAcinetobacter baumanniiの感染は、急速に重症化し致死率も高い。そこで本研究では、A. baumanniiと老化症状を示すヒト早発性老化症候群モデルマウス(Klothoマウス)を用いた感染マウスモデルを構築し、高齢宿主における感染免疫応答について解析する。初年度は、A. baumannii感染Klothoマウスモデルを構築するため、A. baumannii (ATCC19606株)の感染経路および接種菌数の検討を行った。LB培地で増殖させたA. baumanniiを生理食塩水で1x10^6~1x10^8cfu/200μlの濃度に調整し、C57BL/6マウスの鼻腔または静脈内に接種した。鼻腔内感染モデルでは、10^8cfu感染マウスにおいて感染1日目に5%程度の体重減少が認められ、感染2日目には非感染マウスと同等の体重まで回復した。静脈内感染モデルでは、10^8cfu感染マウスにおいて感染1日目に8%程度の体重減少が認められ、感染3日目には非感染マウスと同等の体重まで回復した。静脈内感染モデルにおける肺、脾臓および末梢血中の菌数を解析した結果、肺では感染1日目が最も多く検出され3日目および5日目においても検出されたが、その数は徐々に減少した。脾臓では感染1日目に検出されたが、3日目および5日目では検出されなかった。末梢血では感染1日目から検出されなかった。FACSを用いた解析では、好中球の割合が感染1日目の肺、脾臓、末梢血で増加した。また肺胞マクロファージの割合が感染1日目で増加した。樹状細胞の割合は感染1日目の肺および末梢血中で増加し、脾臓では感染3日目から増加した。以上の結果から、A. baumannii感染マウスの構築の基礎データが得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度に計画したA. baumannii感染Klothoマウスの構築と感受性の比較および生体内菌数の解析について、鼻腔内感染による肺感染マウスモデルを構築する予定であったが、C57BL/6マウスによる感染経路の検討の結果、鼻腔からの感染では10^8cfuのA. baumannii感染においても体重変化が僅かであり、免疫応答の解析が困難であると推測された。そこで静脈内感染モデルに変更し、A. baumanniiの感染経路および接種菌数を検討した。その結果、A. baumannii感染の特徴である肺における菌数が顕著に検出されたこと、感染1日目において好中球等の増加が認められたことから、静脈内感染によるA. baumannii感染免疫応答の解析を可能とした。平成29年度の実験はほぼ計画通りの達成度であるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
Klothoマウスを用いたA. baumannii感染による免疫応答の解析を行う。 (1) Klothoマウスおよびwild-typeマウスに当該菌を静脈内感染後、肺、脾臓および末梢血中における菌数を測定し、日和見菌感染に対する高齢宿主の感受性の違いを明らかにする。 (2) Klothoマウスモデルおよびwild-typeマウスに当該菌を静脈内感染後、肺、脾臓および末梢血中における好中球等の免疫細胞の数と割合、活性化レベルを解析する。また血清中に含まれる各炎症マーカー等を解析し、日和見菌感染に対する高齢宿主の免疫応答の誘導について解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
試薬類の購入の際にキャンペーン割引を利用したため、当初計画より試薬購入代が安価となった。 平成30年度は、マウスおよび解析用の消耗品と研究成果の報告にかかる費用に研究費を使用する予定である。
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