研究課題/領域番号 |
17K15693
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研究機関 | 松山大学 |
研究代表者 |
関谷 洋志 松山大学, 薬学部, 助教 (70454890)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ウェルシュ菌 / 溶菌酵素 |
研究実績の概要 |
これまでに、私たちは溶菌酵素Psmの酵素活性に重要なアミノ酸や菌との結合に重要なアミノ酸などを明らかにしてきた。しかし、Psmが菌のどこに結合するかは明らかになっていない。他の研究グループから、Listeriaのファージ酵素PlyP35の細胞壁結合ドメインは、タイコ酸を除去した細胞壁には結合できないことがこれまでに報告されている。 そこで、細胞壁に存在するタイコ酸に注目し、ウェルシュ菌のタイコ酸欠損株の作製を行い、Psmの溶菌活性に対するタイコ酸の影響を調べた。 古草菌や黄色ブドウ球菌では、tagO、tagA、tagB、tagD、tagF、tagG、tagHなどがタイコ酸合成経路として知られている。ウェルシュ菌にもtagO、tagAを含めた同様の合成遺伝子が存在する。そこで、キシロース転写制御遺伝子xylRをゲノム上のtagO、tagAの上流に組み込んだ株を作製した。xylRを用いた系では、キシロースを添加の有無でxylRの下流の遺伝子の発現を厳密に制御でき、キシロース非存在下で培養した株は、RT-PCRの結果、tagO、tagAの発現が大きく抑えられていた。しかし、菌体中に含まれるリン酸含有量測定しタイコ酸量を比較した結果、親株であるNH13と比べてtagO、tagAの発現抑制株はタイコ酸量が低下したが、完全にはタイコ酸合成を抑制できていなかった。また、Psmとのバインディングの有無を調べた結果、tagOの発現抑制株ではPsmとのバインディングがわずかに低下していた。ザイモグラフィー解析の結果では、NH13とtagO、tagAの発現抑制株の間で大きな差はみられなかったが、経時的に菌液の濁度を測定した結果、tagO、tagAの発現抑制株で溶菌活性の低下がわずかにみられた。しかしながら、Psmの溶菌活性に対するタイコ酸の影響は小さいのではないかと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
黄色ブドウ球菌などでゲノムDNA上のタイコ酸合成遺伝子の欠損株の作製されていたことから、当初、ウェルシュ菌のゲノムDNA上のtagO、tagAを直接欠損させた株の作製を行っていたが、この方法では、これらの遺伝子の欠損株が得られなかった。タイコ酸合成遺伝子は菌の生育に重要な遺伝子であり、ウェルシュ菌のタイコ酸合成遺伝子をゲノム上から直接、欠損させるのは難しいと考えられた。そこで、改めてゲノムDNA上のタイコ酸合成遺伝子の上流にxylRを組み込んだタイコ酸合成遺伝子の発現制御株の作製を行ったため、研究の進捗状況に遅れが出た。
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今後の研究の推進方策 |
培養したウェルシュ菌から細胞壁を抽出した。細菌の細胞壁にはタイコ酸が含まれており、それらをフッ化水素処理で除去した細胞壁を精製している。本年度は、精製したウェルシュ菌の細胞壁を解析し、ウェルシュ菌の細胞壁のペプチドグリカンの構造を明らかにし、細胞壁のペプチド鎖の架橋度、グリカン鎖のアセチル化度を調べる。また、GST-SH3_3ドメインを固相化させたカラムを作製し、アフィニティークロマトグラフィーにより、細胞壁の構成成分から溶菌酵素Psmの結合基質を単離し、同定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度に実施予定であった研究の物品費として使用予定であったが、研究進捗状況に遅れが生じたことにより、当該助成金が生じた。次年度に繰り越した研究を実施する際に物品費として使用する。
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