研究課題/領域番号 |
17K15695
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
金 玄 国立感染症研究所, 細菌第二部, 主任研究官 (90648817)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 結核菌 / イソニアジド耐性 / KatG / 立体構造解析 |
研究実績の概要 |
本研究では遺伝子変異検出に基づいた迅速なイソニアジド感受性試験を可能とするためにイソニアジド耐性結核菌におけるkatG遺伝子上の変異とイソニアジド耐性獲得機構との関連について明らかにすること、並びにイソニアジドの構造を最適化することによって耐性菌が出現しにくい新規抗結核薬の開発を行うことを目的としている。 平成29年度は以下の3つの研究を行った。 1) イソニアジド耐性結核菌における新規katG遺伝子変異の同定。世界各国で分離されたイソニアジド耐性結核菌の全ゲノムを次世代シークエンサーを用いて解析を行い、レファレンス株である結核菌H37Rv株のゲノムと比較することにより、katG遺伝子上の新規変異をいくつか同定した。全ゲノム解析が困難な場合は、PCR法によりkatG遺伝子のみを増幅させたのち、シークエンサーで遺伝子配列の解析を行った。 2) 結核菌由来、野性型及び変異型katG遺伝子の発現株の構築。PCR法により結核菌H37Rv株由来の野性型katG遺伝子を増幅して、発現用ベクターであるpET30aに挿入することにより、結核菌由来WT katG発現プラスミド、pET30a-WT MtkatGを作製した。変異型katG遺伝子の発現用プラスミドは、WT MtkatG遺伝子を鋳型として、市販のキットを用いて変異を導入した。 3) 結核菌由来、組換えKatG蛋白質の発現及び精製。上記の発現用プラスミドを大腸菌株(BL21[DE3]pLysS)に導入し、LBの中でIPTGを加えることによって発現を誘導した後、集菌した。集菌した菌体の破砕を行い、その遠心上清についてHisタグを利用したアフィニティーカラムとゲルろ過カラムを用いたカラムクロマトグラフィー操作を行うことにより、SDS-PAGE上で単一バンドになるまで精製を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最初の研究実施計画通り、順調に進めている。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は以下に示す2つの研究を進める。 1) 結核菌由来、変異型KatGにおける イソニアジド活性化の検討。変異型KatGにおけるイソニアジドの活性化について検討を行い、変異型KatGではイソニアジドの活性化が行われないことを確認する。イソニアジド活性化の検討は、次の二つの方法で行う。 a)野性型及び変異型KatGにイソニアジドとNAD+を直接加えて、活性化されるイソニアジドの量あるいは減少す るNAD+の量をUV-vis spectrometer(260nm)やHPLCで確認する。 b)KatG蛋白質によって活性化されたイソニアジドはNAD+とイソニコチン酸アシル-NAD(H)複合体を形成してinhA蛋白質の活性を阻害することから、野性型または変異型KatGとイソニアジドに加えてNAD+と結核菌由来inhA蛋白質(本申請課題において精製する)を反応系に加えることによって、イソニコチン酸アシル-NAD(H)複合体が形成されるか、inhA蛋白質の活性を指標として確認する。 2) 結核菌由来、変異型KatGの結晶構造解析。イソニアジド耐性獲得機構について詳細に解析を行うため、変異型KatGのX線結晶構造解析を行う。結核菌由来野性型KatGの立体構造は2004年にイギリスのグループから報告された(J.Biol.Chem.2004.279(37):38991-9)。しかしながら、結核菌由来KatGとイソニアジドとの結合様式についてはまだ明らかにされていない。そこで、平成29年度で作製した変異型KatGについて、市販のキットを用いて結晶化条件のスクリーニングを行い、結晶化条件を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会の参加費と旅費の申請が遅くなっただめ残った残額の一部は使用された。
次年度研究費は、平成29年度に少し余った残額と合わせて蛋白質実験に必要な一般試薬および消耗品、結晶化のために必要な試薬類の購入に使用する。さらに、回折データ取得実験のための放射光科学研究施設への旅費に使用する予定である。
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