研究課題/領域番号 |
17K15701
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
齊藤 暁 大阪大学, 微生物病研究所, 特任助教(常勤) (30621792)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | HIV / インターフェロン / 宿主因子 |
研究実績の概要 |
これまでに、I型インターフェロン(IFN)誘導性のエイズウイルス感染阻害宿主因子が複数同定されているが、私たちは最近、特定のT細胞株において既知のものではないIFN誘導性宿主因子が発現していることを示唆するデータを得た。また、この感染阻害には細胞株特異性があり、私たちはIFN処理によりHIV感染を阻害する細胞(仮にA細胞とする)および阻害しない細胞(仮にB細胞とする)の両方を同定している。本研究課題ではこれらの知見に基づき、新規のIFN誘導性宿主因子を同定し、抗ウイルス作用の分子機序を解明することを目的とする。 本年度は、IFN処理もしくは未処理の両細胞からRNAを抽出し、RNA-Seq解析を行った。その結果、IFN処理A細胞でのみ特異的に発現レベルが上昇する遺伝子を複数見いだすことができた。そこで、候補遺伝子を発現ベクターに組み込み、強制発現する実験系を構築した。これまでに検索した遺伝子のうち多くはベクター導入細胞でのタンパク発現が確認できたが、抗HIV効果を示す遺伝子は認められていない。また、検索した遺伝子のうちいくつかは導入細胞でのタンパク発現そのものが確認できなかったため、また、より効率良くスクリーニングを進めるため、現在は候補遺伝子のノックダウンの実験系を 用いることで候補遺伝子の探索に取り組んでいる。さらに、これまでに我々が取り組んできたIFN抵抗性カプシド変異体を用いてA細胞におけるIFN感受性を調べたところ、当該変異体はA細胞においても比較的高いIFN抵抗性を示した。このことから、当該変異体はA細胞においてIFN誘導性宿主因子から回避している可能性が示唆された。本年度は1つの国際学会および1つの国内学会で口頭発表を、2つの国際学会においてポスター発表を行うことで研究成果を発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、効率的にターゲット遺伝子を同定するために、4サンプル(A細胞とB細胞のIFN処理有り/無し)を用いてRNA-Seq解析を行った。その結果、IFN処理A細胞でのみ特異的に発現レベルが上昇する候補遺伝子を複数見いだすことができた。次に、候補遺伝子を絞り込んでいくため、候補遺伝子を発現ベクターに導入することで強制発現の実験系を構築した。多くの候補遺伝子は発現が確認されたが、抗ウイルス効果を持つ候補遺伝子は認められなかった。一部の遺伝子については十分なレベルの発現を確認することができなかったため、また、より効率良くスクリーニングを進めるため、現在はノックダウンの実験系を用いて検討を行っている。また、これまでに私たちが取り組んできたIFN抵抗性カプシド変異体を用いてそのIFN感受性を調べたところ、A細胞においても比較的高いIFN抵抗性を示したことから、当該変異体はA細胞においてIFN誘導性宿主因子から回避している可能性が示唆された。さらに、HIVをIFN処理A細胞で馴化させることでIFN抵抗性ウイルスの出現を誘導する実験を現在進めている。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの方針として候補遺伝子を発現ベクターに組み込み、A細胞とは異なる細胞で候補遺伝子を強制発現させることで探索を進めてきたが、現在までに抗ウイルス活性を示す遺伝子を同定できていない。そこで本年度は候補遺伝子に対するsiRNAをA細胞に直接導入し候補遺伝子をノックダウンさせる手法で探索を進めていく。また、IFN処理を施したA細胞におおけるHIVの馴化を進めており、これまでのところウイルス増殖が抑えられているが、今後ウイルス増殖レベルが上昇した場合には耐性ウイルスのゲノム解析を行い、IFN抵抗性に寄与する変異を同定する。次年度においても学会発表や学術論文として研究成果を積極的に発表していきたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込み額と執行額は異なったが、研究計画に大きな変更はなく、前年度の研究費も含め、当初予定通りの計画を進めていく。
|