本研究課題では、特定のT細胞株において既知のものではないI型インターフェロン(IFN)誘導性宿主因子が発現していることを示唆するデータにヒントを得て、新規のIFN誘導性宿主因子を同定することを目的とした。昨年度までにRNA-Seq解析を行い、IFN処理細胞でのみ特異的に発現レベルが上昇する遺伝子を複数見出しており、強制発現の実験系での絞り込み作業を試みたが、一部の遺伝子は発現自体が確認できないという課題があった。 そこで本年度はsiRNAを用いて候補遺伝子をノックダウンする実験に取り組んだ。ところが、複数のsiRNA導入法を試したものの、該当細胞ではsiRNA導入効率が著しく低く、候補遺伝子の絞り込みを進めるのが非常に困難であった。そこで、実験の方針を変更し、CRISPR-Cas9法を用いたノックアウト細胞作製に取り組むことにした。様々な条件検討により、効率よくノックアウト細胞を作製する手法の確立に成功した。すでに複数の宿主因子についてのノックアウト細胞の作製をすませており、例えばSTAT2ノックアウト細胞ではIFN処理の効果がキャンセルされること、既知のIFN誘導性宿主因子ノックアウト細胞ではIFN処理の効果が一部減弱することを明らかにできている。年度内に候補遺伝子を同定することはできなかったが、現在十数種類の候補遺伝子について評価を進めており、なるべく早い時期に同定に繋がるデータを出せることを期待している。 本年度は1つの国内学会でシンポジウム講演を、1つの国際学会で口頭発表を、1つの国際学会および1つの国内学会においてポスター発表を行うことで研究成果を発表した。また、本研究課題に関連する学術論文2本をすでに国際学術誌に投稿済みであり、現在レビュー中である。
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