研究課題/領域番号 |
17K15703
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
太田 圭介 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (90625071)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ヒトパラインフルエンザウイルス2型 / F蛋白 / HN蛋白 / Rab蛋白 / 細胞内輸送 |
研究実績の概要 |
ヒトパラインフルエンザウイルス2型(hPIV-2)を用いて、パラミクソウイルスの増殖に関与するRab蛋白の同定および解析を行った。Rab蛋白は細胞内の物質輸送に関する蛋白で、60種類以上が同定されているが、そのうちそれぞれ機能の異なる3種類のRab蛋白(Rab8a、Rab11a、Rab27a)に着目した。本研究では、hPIV-2をはじめとするパラミクソウイルスのウイルスコンポーネントの細胞内輸送にRab蛋白が関与すると予想し、研究を進めた。hPIV-2感染により、Rab8a、Rab11a、Rab27aのmRNA量・蛋白量ともに、変化は見られなかった。Rabノックダウン、ノックアウト細胞ならびに過剰発現細胞を用いた解析により、Rab8a、Rab11aはhPIV-2増殖に影響を与えなかったが、Rab27aはhPIV-2増殖を正に制御することがわかった。Rab蛋白は、活性型と不活型の2つの形をとることができるが、常時活性型のRab27a変異体の過剰発現細胞では、野生型のRab27a発現細胞に比べ、さらにhPIV-2増殖が促進したことから、Rab27aの活性化がhPIV-2増殖に重要であることがわかった。Rab27aとhPIV-2蛋白の免疫染色により、hPIV-2のコードする膜蛋白であるF蛋白とHN蛋白がRab27aと共局在していることがわかった。フローサイトメトリーにより、常時活性型のRab27a変異体の過剰発現細胞では、hPIV-2感染により細胞表面に発現するF蛋白、HN蛋白量がコントロール細胞に比べ多いことがわかった。F蛋白、HN蛋白のトランスフェクションにおいても、常時活性型のRab27a変異体の過剰発現細胞では、細胞表面のF蛋白、HN蛋白の発現量がコントロール細胞に比べ多かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
着目した3つのRab蛋白(Rab8a、Rab11a、Rab27a)について、hPIV-2感染によるmRNA量・蛋白量の変化は見られなかったものの、Rab27aについてはhPIV-2増殖を促進することが明らかとなった。さらに、Rab27a存在下では細胞表面のF蛋白とHN蛋白量が増加するという結果が得られており、Rab27aによるF蛋白・HN蛋白の細胞表面への輸送がhPIV-2増殖促進につながるのではないかと推測される。以上のように、実験計画書に沿って研究を進めることができており、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
hPIV-2増殖に影響を与えたRab27aに焦点を絞って研究を進める。hPIV-2が関与するRab27aのエフェクター分子など、研究対象を広げて本研究課題を推進していく。さらに、本研究課題は細胞内輸送であるので、ウイルスの細胞内輸送に関与する他の宿主因子にも着目する。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品の使用量が予想よりも少なく、次年度使用額が生じた。また、次年度には国際学会(17th Negative Strand Virus Meeting)への参加を予定しているため、これに関する支出が多くなることが予想される。したがって、予算を次年度に持ち越すことがより効率的な研究遂行につながると判断した。
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