本研究では、ヒトパラインフルエンザウイルス2型(hPIV-2)を用いて、パラミクソウイルスの増殖、特に細胞内輸送のメカニズムを明らかにすることを目的とした。前年度より、Rab蛋白以外の細胞内輸送に関与する宿主因子(actinおよびactin制御蛋白)に研究対象を広げている。これまでに、hPIV-2のV蛋白が不活化RhoAと結合することで、actin重合体(F-actin)形成が促進することを明らかにした。今年度は、hPIV-2によるF-actin形成に直接関与する宿主因子の探索を行った。その候補としてactin結合蛋白であるProfilinとCofilinを考えた。哺乳動物では、Profilinは4つのアイソフォーム(Profilin1-4)が存在し、それらはF-actinの伸長末端にactinを付加することでactin重合を促進させる。一方で、Cofilinには2つのアイソフォーム(Cofilin1-2)が存在し、それらは伸長末端とは反対側のactinに結合し、F-actinの脱重合を引き起こす。これらのうち、Profilin2がV蛋白と結合することがわかった。Profilin2のノックダウンにより、hPIV-2によるF-actin形成が阻害され、hPIV-2増殖が抑制した。また、V蛋白がactinとProfilin2の結合に影響を与えることがわかった。これらのことから、V蛋白がProfilin2と結合することでactinとProfilin2の結合に影響を与え、F-actin形成を促進することが示唆された。 さらに、他の近縁ウイルスとProfilin2の関係を調べたところ、hPIV-2と同属のムンプスウイルス、PIV-5、シミアンウイルス41、hPIV-4のV蛋白はいずれもProfilin2と結合したことから、Profilin2を介したV蛋白によるF-actin制御はこの属に共通の性質であると考えられる。
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