インフルエンザウイルスのゲノムRNAは8本に分節化しており、それぞれのRNA分節が異なるウイルス蛋白質をコードしている。したがって、異なるウイルス株が細胞に重複感染すると、一部のRNA分節を交換して再集合したゲノムを持つハイブリッドウイルスが生じることがある。この遺伝子再集合によって、数十年に一度、ヒトに適応し世界的な大流行(パンデミック)を引き起こす新型ウイルスが出現する。したがって、 インフルエンザの細胞増殖機構や新型ウイルスの出現機構を考える上で、RNP の集合機構を解明することが重要である。 これまでに、蛍光顕微鏡法と細胞の超薄切片を用いた電子顕微鏡法で細胞内の同一領域を解析し、ウイルス感染細胞の微細構造を解析した。その結果、ウイルス感染細胞内に存在するRNPの形態を捉えることにに成功し、細胞質内の集合状態におけるRNP構造を明らかにした。また、免疫電子顕微鏡法を実施し、特定の細胞小器官とRNPを同時に標識する事でRNP分子の局在を詳細に絞り込んだ。さらに、電子線トモグラフィーを用いることによって、細胞内のRNPのより高解像度の構造を3次元で捉えた。
|