研究課題/領域番号 |
17K15705
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
石坂 彩 東京大学, 医科学研究所, 特任研究員 (70746859)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | HIV / 免疫活性化 / 潜伏感染 |
研究実績の概要 |
現在の抗HIV 療法ではHIV 感染症は根治せず、患者体内では慢性的に炎症状態が続いている。申請者はこれまでに残存HIVの転写活性を検出する独自の方法を考案し、残存感染細胞の転写とCD8+ T 細胞の活性化が強く相関していることを報告した。この観察は残存ウイルスの持続的な転写・複製と慢性炎症の相互促進の可能性を示唆しており、この悪循環を成立させる体内環境の解明は病態理解を深める上で不可欠である。この背景には恐らく免疫細胞の疲弊による日和見感染症の活性化や腸内細菌の異所性感染などの複合的な要因があると考えられるが、その証拠は不十分である。本研究では患者の体内環境を精査することで残存感染細胞と慢性炎症の相互促進の分子機構の解明を進め、HIV の持続感染および慢性炎症が成立する分子基盤の理解を試みることを目的としている。 初年度である平成29年度は、血中HIV感染細胞のウイルス転写レベルの違いによる炎症性サイトカインの分泌レベルの解析を行っている。一方で体内環境を理解するため、腸内細菌叢の解析を合わせて進めている。現在、東京大学医科学研究所附属病院に通院するHIV患者及び健常者から血液と糞便の回収している。これらの材料を腸内細菌叢のゲノム解析を進め、HIV患者体内で起こる慢性的な炎症状態を成立する環境要因の同定を進めている。HIV患者体内における免疫反応の沈静化に向けた取り組みはHIV感染症の制御につながるひとつの有効策である。すなわち治療後も残存する感染細胞の正確な同定、および残存感染細胞による慢性炎症といった病態発症の理解が重要な情報となる。本研究の成果は残存感染細胞の制御、制圧の分子基盤づくりの達成だけでなく、新たな血液診断技術の実用化とその対策につながる萌芽性も有する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究所の建物改修工事のため、実験を行えない期間が生じたため。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、 残存HIVの転写活性が陽性または陰性の感染細胞のin vitro におけるウイルス産生能の比較解析からHIVの転写活性がウイルス複製を反映しているか否かの検討を行う。また、CD4+ T 細胞のST を発現する責任サブセットを同定し、活性化し続ける感染細胞の特定を試みる。さらに回収された糞便から腸内細菌叢のマイクロバイオーム解析を進め、HIV患者体内で起こる慢性的な炎症状態を成立する環境要因の同定を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究所の建物改修工事のため、実験を行えない期間が生じたため。
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