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2019 年度 実施状況報告書

B型肝炎ウイルスのcell-to-cell感染機構と意義の解明

研究課題

研究課題/領域番号 17K15708
研究機関明治大学

研究代表者

竹内 潤子 (柴田潤子)  明治大学, 研究・知財戦略機構(生田), 研究推進員 (80647488)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2021-03-31
キーワードウィルス / B型肝炎ウイルス / HBV
研究実績の概要

エイズの原因ウイルスであるヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)には2つの感染様式が存在することが知られている。細胞外に放出されたウイルス粒子が新たな標的細胞に感染する cell-free 感染と、感染細胞が標的細胞に接触することでウイルス粒子を直接受け渡す cell-to-cell 感染である。申請者らは数学と実験を融合したアプローチにより、HIV-1感染におけるcell-to-cell 感染の寄与率を明らかにしている(Iwami and Takeuchi et al. eLife 2015)。一方、B型肝炎ウイルス(HBV)に関しては、これまで簡便で効率的な感染許容細胞株が存在しなかったことからcell-to-cell 感染様式の報告はなかった。
本研究では、申請者の所属研究室(国立感染症研究所)で世界に先駆けて樹立されたHBV感染許容細胞およびHBV粒子放出細胞の共培養実験系を用いて、HBVのcell-to-cell 感染機構を明らかにする。これにより、①宿主免疫や中和抗体(ワクチン)からのウイルス逃避機序を理解できる可能性が、そして②抗HBV剤の薬効をcell-free 感染とcell-to-cell 感染に分けて評価できるスクリーニング系の開発へとつながることが期待できる。現行の治療法ではHBV 持続感染者からウイルスを完全に排除できないことが問題になっているが、その原因のひとつとしてcell-to-cell 感染による薬剤感受性の低下が示唆されている。本研究で得られる成果はHBV 持続感染者からのウイルスの完全排除を目指した薬剤開発の一助となると期待される。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

これまでに共培養実験とflow-cytometry を組み合わせ、HBVの cell-to-cell 感染のみが生じる実験系を構築した。その結果、HBV はcell-to-cell 感染で拡がる可能性が示唆されたが、その寄与率は低く、現在実施している手法だけでHBVの cell-to-cell 感染を評価することは困難であった。その矢先、2018年と2019年にin vitroにおけるHBVの cell-to-cell 感染に関する報告が相次いだ。(Ko et al. J Hepatol 2018, Konig et al. J Hepatol 2019)。しかしながら、その成果は controversialであり、議論の余地がある。つまり、2018年のKo等の論文ではcell-to-cell 感染は確認されなかったのに対し、2019年のKonig等の論文では低頻度ながらもそれが確認された。両論文共に、本研究課題と同様の実験系でHBVのcell-to-cell 感染を評価しており、今後はより高感度な技術を用いて検証する必要性が生じた。

今後の研究の推進方策

本研究課題で既に確立された「HBVのcell-to-cell 感染のみが生じる実験系」を1細胞解析 に持ち込む。これにより、存在自体が controversial である HBVのcell-to-cell 感染を高感度に検出できるだけでなく、定量的な評価が可能となる。HIV-1の研究においては、cell-free 感染では低コピー数のウイルスが細胞に感染するのに対し、cell-to-cell 感染では大量のウイルスが細胞に受け渡されると報告されている。これは、cell-to-cell 感染がcell-free 感染よりも宿主免疫から逃避しやすく、抗ウイルス剤が効きにくいことを説明している。したがって、HBVのcell-to-cell 感染様式についても定量的に評価することが重要であると考えられるが、国内外でそのような報告はない。なお、1細胞解析によるシーケンスは「先端ゲノム支援」によるサポートを受け、2020年度に実施する予定である。

次年度使用額が生じた理由

in vitro 実験系において、HBVのcell-to-cell感染が生じるか否かは近年、論争中である(Ko et al. J Hepatol 2018、Konig et al. J Hepatol 2019)。そこで、本研究課題においてもより高感度な手法(1細胞解析)を用いて、HBVのcell-to-cell感染について評価する必要性が生じ、補助事業期間を1年延長するに至った。次年度使用額は、実験費用(共培養実験、10x genomicsによるシングルセル単離、ライブラリー作製)、国際誌への投稿費用等に充てる予定である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2019

すべて 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)

  • [学会発表] A Single Adaptive Mutation in Sodium Taurocholate Cotransporting Polypeptide (NTCP) Induced by Hepadnaviruses Determines Virus Species Specificity.2019

    • 著者名/発表者名
      Junko S TAKEUCHI
    • 学会等名
      7th Japan-Taiwan-Korea HBV Research Symposium, Tokyo, JAPAN
    • 国際学会
  • [学会発表] ヘパドナウイルスは宿主進化の選択圧となったか2019

    • 著者名/発表者名
      竹内(柴田)潤子
    • 学会等名
      第21回 日本進化学会(札幌)
    • 招待講演
  • [学会発表] HBV-related hepadnaviruses drive an adaptive evolution in a host receptor2019

    • 著者名/発表者名
      Junko S TAKEUCHI
    • 学会等名
      The 67th Annual Meeting of the Japanese Society for Virology, Tokyo, JAPAN

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公開日: 2022-12-28  

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