研究課題
本研究では、培養細胞系およびB型肝炎ウイルス(HBV)感染モデル動物を用いて、エキソソームを介した新規感染機構の解明、感染性の評価および予防法の確立を目的としている。本研究ではこれまで、エキソソームに内包されたB型肝炎ウイルス(HBV)がウイルス感染個体の血液中に存在し、これらウイルスがHBs蛋白質を標的とした中和抗体に対して抵抗性を示すことを明らかにした。本年度では、エキソソーム内包ウイルスの感染性および予防法を評価すべくHBV感染感受性を示すツパイを用いて実験を行った。まずはツパイへのウイルスの感染性を解析したところ、遺伝子型によってウイルスの感染性が異なったものの、ツパイでの感染が確認された。続いてエキソソームを介した感染の予防法を確立すべく、ツパイにHBs抗原やHBc抗原を各種投与法によって免疫し、誘導される免疫応答の解析を行った。その結果、HBs抗原とHBc抗原を基剤であるカルボキシビニルポリマーと混合し、鼻粘膜投与をすることで、ツパイにおいて強力な中和抗体およびIgA抗体の誘導がみられた。さらに脾細胞を回収し、ウイルス蛋白質で刺激したところ強いIFNg応答が見られたことから、本免疫法によって細胞性免疫が強く誘導されることが示された。エキソソームを介したウイルス感染を防ぐには中和抗体の誘導のみでは十分ではないと考えられることから、本免疫法によって細胞性免疫を誘導することで、エキソソームを介した感染を防げるものであると期待される。
3: やや遅れている
感染実験に使用する予定であったツパイの繁殖が想定よりも遅れており、調達が困難であったため。現在、繁殖状況が改善されてきていることに加えて、中国からの輸入の目途もたったことから、次年度は研究の遂行ができるものと考えられる。
今後は当初の予定に従い、ウイルス感染モデル動物であるツパイなどを用いてHBVにおけるエキソソームを介した感染を予防するワクチンの確立を試みる。本年度の研究成果を基に、エキソソームに内包されたHBVの感染機構を詳細に明らかにし、HBVの感染環における役割の解明を試みる。
使用する動物の調達に時間を要したため、次年度使用額が生じた。2019年度は、培養細胞や実験動物を用いた種々の研究に必要な試薬などの購入に使用する予定である。
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Virology
巻: 529 ページ: 101~110
10.1016/j.virol.2019.01.015
http://www.igakuken.or.jp/infectious/index.html