今後の研究の推進方策 |
EFdAのHIV-1野生株 (HIVWT) に対するEC50値は0.001 μMであり、EFdAはHIVWTに対して非常に高い阻害効果を示すが、HIVEFdARに対するEC50値は0.15 μMとなり活性が低下する。一方で、その他のNRTIのHIVEFdARに対するEC50値は、Ed4T, AZT, 3TC, FTCで10 μM以上、TDFで8 μMとEFdAに比して非常に高い値を示す。すなわち、EFdAはEFdAに耐性を獲得したHIVEFdARに対してさえ、最も効果的なNRTIであると言える。 平成30年度の研究に関しては、これまで行ってきたRT52AEFdARsの結晶化条件の検討を継続して行い、RT52AEFdARsの結晶構造解析を目指す。結晶が得られた場合、RT52AEFdARsの結晶構造を用いてHIV-1がEFdAに対して耐性を獲得する機構を明らかにする。実際の結晶構造を用いることで分子動力学的手法を用いた解析よりも詳細なデータを得る事が出来るだけでなく、分子動力学的手法では不可能である活性中心近傍以外の変異が薬剤耐性に及ぼす影響を検討する事が出来る。HIV-1のプロテアーゼは活性中心近傍以外の変異も薬剤耐性の獲得に強く関与している事が明らかとなっていることから、RTに関しても、同様の解析結果が得られる可能性がある。また、分子動力学的手法を用いた薬剤耐性化機構の検討に関しても同様に継続して行う。RTの活性中心近傍に存在するアミノ酸の中でもEFdAに特徴的な部分構造であるethynyl基と相互座要しているアミノ酸 (A114, Y115, M184, D185及びF160) に着目して解析を進め、薬剤耐性化機構だけでなく上述の様に、EFdAがHIVEFdARに対してさえ、最も強力な抗HIV活性を発揮できるメカニズムに関しても解析を進める。
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