“CD69-Myl9システム”は、炎症に伴い活性化した血小板から産生されたMyl9が、血管内腔に網目状構造体(Myl9 nets)を形成し、CD69陽性の炎症細胞の効率的な組織浸潤を誘導する新規の炎症制御システムである。しかし、血管内腔における炎症細胞のCD69発現誘導やMyl9 netsの形成メカニズム、また、どのような炎症性疾患にて働くシステムなのかなど、このシステムには不明な点が多く残っていた。 これまでに炎症肺血管の内腔において抗原提示細胞と思われる集団がMyl9 nets近傍に局在していることがわかっていた。そこで、事前に免疫したマウスに、細胞に取り込まれることで蛍光を発する抗原で気道炎症を誘導し、血管内腔にて抗原を提示する可能性のある抗原提示細胞の同定を行った。結果、血管内腔に局在するCX3CR1陽性の樹状細胞が多くの抗原を取り込んでいることがわかった。 Myl9 netsは血液凝固物である血栓の一種と考えられる。Myl9 netsがいわゆる血栓と同一であるか、in vitroで誘導したフィブリン血栓をコンフォーカル顕微鏡にて解析したところ、血栓構造内には多くの血小板やフィブリン様構造が認められたが、Myl9 netsが観察できなかった。しかし、Myl9の発現は血栓内の血小板で見られており、血小板の活性化のタイプによってnets形成の有無が決まる可能性が示唆された。 気道炎症や潰瘍性大腸炎などの自己免疫性炎症ではなく細菌ならびにウイルス感染などの感染によってMyl9 netsが形成されるか解析した。結果、OVA誘導性気道炎症やDSS誘導性と比べてMyl9 nets形成は弱いものの、一方で細菌感染と比較してウイルス感染時により形成される傾向があることがわかった。このことより、Myl9 netsの形成には炎症反応でもさらに特異的な誘導機構が存在する可能性が示唆された。
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