研究課題/領域番号 |
17K15720
|
研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
橋本 登 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 助教 (90712365)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 抗炎症 / 組織再生機構 / マクロファージ / Siglec-9 / 糖鎖 |
研究実績の概要 |
ヒト歯髄幹細胞培養上清(SHED-CM)において同定された分泌型Siglec-9(sSiglec-9)とMCP-1による単球系細胞の炎症組織再生型以降機構の解明のために、以下の検討を行った。 卵白アルブミン(OVA)誘導アトピーマウスにおけるSHED-CMまたはsSiglec-9の抗炎症効果を検討した。その結果、SHED-CMおよびsSIglec-9投与群では対照群に比べ、皮膚の肥厚や肥満細胞の誘導を抑制し抗炎症効果があることが示された。現在、その時における単球由来細胞の違いに注目し解析を行っている。 また、マウスマクロファージ細胞株RAW264.7とマウス骨髄由来マクロファージ上のSiglec-9のリガンド糖鎖キャリアタンパクの同定を行うために、細胞溶解サンプルにSiglec-9-Fcを加えProtein A beadsでpull-downした産物に対し、そのタンパク成分のLC/MSによる網羅的解析を行った。その結果、コントロールサンプルと合わせて606タンパクが同定された。現在、その中でSiglec-9特異的なタンパクを絞り込み、その意義を検討している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Siglec-9リガンド糖鎖構造解析のためのリガンド糖鎖キャリアタンパクの同定を進めている。この解析で同定されたタンパクに対する特異的な抗体で免疫沈降し、SDS-PAGE、転写後種々の糖鎖特異的なレクチンを用いその結合性を評価することでSiglec-9のマクロファージ上糖鎖の構造を決定する。また、現在進行中のアトピーマウスモデルは主にヘルパーT細胞Th2の活性により病態進行することがわかっている。これまでに他の病態モデルにおいてSiglec-9がヘルパーT細胞の分化を制御するという報告があるため、アトピーマウスにおけるT細胞制御にも注目して解析を行う必要がある。すでにSiglec-9結合分子の候補を質量分析で解析しており、さらにこれまでに報告のなかったアトピーマウスでのsSiglec-9の効果を新たに発見したことからおおむね順調に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
アトピー性皮膚炎モデルマウスにおけるsSiglec-9の抗炎症効果を明らかにするために、投与後の皮膚組織および所属リンパ節の解析を行う。これまでにsSiglec-9はMCP-1との協調シグナルによりマクロファージを炎症系M1から抗炎症型M2に変遷させることがわかっており、その結果組織修復再生環境にする。そこでアトピー性皮膚炎におけるsSiglec-9とマクロファージの役割を明らかにしその病態改善効果を明らかにする。また、皮膚組織とリンパ節におけるマクロファージ以外の細胞のプロファイルも解析し、その性状を明らかにする。 差異が認められた細胞上のSiglec-9結合タンパクを質量分析により同定する。さらに、それらの細胞に対するsSiglec-9の効果をin vitroの系で解析し、受容体とその下流シグナルを明らかにする。 これまでにSiglec-9結合受容体として同定されているCCR2および新規に同定された受容体上の糖鎖構造を解析するために、組換えタンパクを作成し、Sigelec-9と結合することを明らかにしたのちに糖鎖構造の解析を行う。 以上のことから、sSiglec-9とそのリガンド糖鎖、そしてsSiglec-9の受容体を明らかにし炎症組織再生効果の全貌を明らかにすることによりレクチンを用いた創薬の情報的基盤の樹立を目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
現在、間質性肺炎についての結果に関し論文投稿準備中である。また、劇症性肝炎モデルの検討が難航したため皮膚炎 モデルに移行した。その結果、動物モデル作成に時間がかかり次年度使用額が発生した。その論文投稿は2019年9月を予定している。これまでの解析で、MCP-1/Siglec-9が様々な免疫細胞 の機能に影響を与えることが明らかになりつつある。インパクトの高い研究になると確信している。 主にアトピー性皮膚炎モデルマウスの作成とその解析費、成果報告のための学会参加費と論文投稿費用に使用する。
|