免疫組織はリンパ球と免疫微小環境からなり、微小環境は様々なストローマ細胞から構成されている。ストローマ細胞はサイトカインなどを産生し、リンパ球の分化、成熟、維持、そして応答に大きな役割を担っている。このサイトカインの一つにインターロイキン15(IL-15)があり、T細胞、NKT細胞、NK細胞の分化、成熟、維持および機能に重要な働きをしている。しかし、生体内における各IL-15産生性免疫微小環境の局所機能が明らかにされていなかった。 本研究は、代表者が独自に作製したIL-15 cKOマウスを用いて、胸腺、骨髄、リンパ節、肝臓および腸管におけるIL-15産生性免疫微小環境による免疫担当細胞の分化、成熟、維持および機能の制御機構を明らかにした。胸腺においては、胸腺上皮細胞由来にIL-15が新たに分画したiNKT細胞亜集団の分化に不可欠であることを見出した。さらに、胸腺内IL-15産生性免疫微小環境がiNKT細胞を介したメラノーマ細胞の肺転移抑制機構を明らかにした。一方、胸腺内の血管内皮細胞由来のIL-15がT細胞とiNKT細胞の胸腺外移出を制御している可能性を示した。骨髄において、ストローマ細胞より血球細胞由来のIL-15がNK細胞の骨髄内分化に重要であることを明らかにした。また、リンパ節内のIL-15産生細胞がILC1の維持と機能に重要であることを示唆した。肝臓において、肝細胞特異的IL-15 cKOマウスを解析し、1型自然リンパ球(ILC1)の分化に関与していることを示唆した。腸管において、腸管上皮細胞由来のIL-15が腸上皮間リンパ球の成熟と疲弊を制御していることを明らかにした。よって、本研究は様々な組織でのIL-15産生性ストローマ細胞による免疫担当細胞の制御機構を明らかにし、抗がん免疫において、胸腺内IL-15産生性免疫微小環境も重要であることを示唆した。
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