腫瘍内微小環境形成において腫瘍随伴マクロファージ(TAM)が重要な役割を果たしている。そこで、TAM活性の分子基盤を解明することでTAMを標的とする治療法の開発が癌根治という新たな治療戦略に繋がることが期待される。申請者は最近セマフォリン分子Sema7AがM2 typeマクロファージの活性を制御し、免疫恒常性維持に重要な役割を果たしていることを明らかにした。更に、マクロファージに発現するSema6DがM1/M2への極性化を制御するとの知見を得た。本研究では、癌細胞移植マウスモデルを用い、セマフォリン分子をターゲットにする腫瘍組織微小環境形成に対する分子メカニズムを解明し、セマフォリン分子機能障害抗体を用いた抗腫瘍に対する治療効果を検討する。 そこで、当年度の研究実施計画の1)腫瘍内微小環境におけるTAMのメタボリズム及び代謝産物の網羅的解析及びSema6Dの役割検討及び2)TAMの代謝制御による癌細胞の増殖及び腫瘍微小環境形成機構の解析を行なった結果、Sema6D遺伝子を欠損したTAMの脂質の取り込み及び脂質代謝経路が顕著に抑制されていた。さらに、TAMのマーカー分子であるCD206の発現レベルが低下していた。一方、抗癌活性を持つ炎症性マクロファージの浸潤が認められ、腫瘍の増殖が減少する結果が得られた。これらの結果により、Sema6Dシグナルのマクロファージの脂質代謝を制御し、TAM分化を促進に関与することが明らかとなった。
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