研究実績の概要 |
腫瘍内微小環境形成において腫瘍随伴マクロファージ(TAM)が重要な役割を果たしている。そこで、TAM活性の分子基盤を解明することでTAMを標的とする治療法の開発が癌根治という新たな治療戦略に繋がることが期待される。申請者は最近セマフォリン分子Sema7AがM2 typeマクロファージの活性を制御し、免疫恒常性維持に重要な役割を果たしていることを明らかにした(Kang et al, J. Immunol., 2012)。更に、マクロファージに発現するSema6DがM1/M2への極性化を制御するとの知見を得た。本研究では、癌細胞移植マウスモデルを用い、セマフォリン分子をターゲットにする腫瘍組織微小環境形成に対する分子メカニズムを解明し、セマフォリン分子機能障害抗体を用いた抗腫瘍に対する治療効果検討が本研究の目的である。 本研究からは、下記の3つを明らかにした。1) mTOR依存的にSema6Dの発現が制御される、2)Sema6D欠損マクロファージはM1応答が行進し、TAMへの分化が抑制される、3)Sema6D欠損マクロファージは細胞内の脂質代謝に異常があり、TAMへの分化が乏しい、4) TAMへの分化にはSema6D-PlexinA4シグナルが必須である。以上のことより、Sema6D-PlexinA4 シグナルはマクロファージの脂質代謝制御に重要な働きをして、TAMへの分化を促進し、腫瘍組織微小環境形成に必須であることを明らかにした。
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