研究実績の概要 |
我々はI型IFN産生をGFPの蛍光によってモニタリングできるマウスを利用しI型IFN発現の顕微鏡下において経時的に追跡する研究を行う途上において、樹状細胞が細胞間接触依存的にI型IFNを産生する新規のシグナル伝達経路が存在することを示した。本研究においては細胞間接触による相互作用を実現するシグナル伝達機構とそれを媒介する分子機構を同定し、同定された分子による抗ウイルス応答の誘導法の探索を行うことを目的とし、(1)野生型細胞と種々の遺伝子欠損細胞を混合し、細胞間接触シグナル伝達によるIFN誘導に必要な遺伝子を同定する。(2)種々の遺伝子の欠損細胞とIFN受容体欠損細胞を混合し、細胞間接触シグナル伝達を引き起こすために必須の分子を同定する。(3)野生型細胞と混合したIFN受容体欠損細胞を経時的にソーティングによって回収し、トランスクリプトーム解析を行うことで細胞間接触シグナル伝達により引き起こされる応答を特徴づける。特に、必須の転写因子等を同定する、の3つの実験を主に行った。結果として次のようないシグナル伝達の存在が示された。すなわち、ウイルスは樹状細胞に感染するとRLR-IPS-1依存シグナル伝達を活性化し、IFNを発現するのみならず、IRF3, IRF7依存的に細胞間接触シグナル伝達を司るリガンド分子を発現する。一方、リガンド分子はその受容体を通じて隣接する細胞の細胞間接触シグナル伝達経路およびその下流に位置するStat1を活性化し、IFN産生を誘導する。このStat1活性化にはリン酸化酵素Sykの関与が示唆される。
|