今年度の研究では、RNA結合タンパク質であるHuRが、ウイルス感染においてPlk2 mRNAにUリッチエレメントを介して直接結合することにより当該mRNAを安定化してPlk2タンパク質発現を促進し、結果的にIRF3の活性化を促進することで、I型インターフェロン(IFN)産生を正に調節し、抗ウイルス応答を正に制御していることを見出し、最終的に論文として報告を行った。この報告は、感染症に対する免疫機構の新たな一面を明らかにしたものであり、治療あるいは免疫応答制御の新たな標的メカニズムとして重要な意味を持つと考えている。 また、HuRのようにRNA結合ドメインを有し、自然免疫応答に関与する新規調節因子の同定においては、免疫細胞の培養細胞とCRISPR/Cas9システムを併せて用いることで、今年度で複数の候補遺伝子の同定を行うことができた。また、論文としての報告には至らなかったが、それらの分子の詳細な分子機構の解析を行ったとともに、生体レベルでの重要性を明らかにすべく、遺伝子欠損マウスの作製を行った。 ①、CCCH型のzinc fingerドメインを持つ遺伝子Xは、様々なTLR刺激やウイルス感染刺激に対するIL-6産生などのサイトカイン産生などの免疫応答を強力に抑制する負の調節因子であることを見出した。 ②、CCCH型のzinc fingerドメインを持つ遺伝子Yは、LPS応答におけるIL-6産生の正の調節因子であることを見出した。 これらの機構は過去に報告が無く、これらを明らかにすることは自然免疫応答の新たな側面を明らかにすることに繋がる。
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