前年度の研究からCystatin SNは鼻粘膜上皮細胞のバリア機能を保護または促進することでスギ花粉症の抑制に働くことが示された。今年度は、主にCystatin SNの1) 上皮細胞のバリア機能に対する促進作用、および2) 花粉由来プロテアーゼに対する阻害効果について検討した。 1)上皮細胞のバリア機能に対する促進作用について Cystatin SNが鼻粘膜上皮細胞においてタイトジャンクション構成タンパク質(ZO-1およびClaudin-1) の発現を直接促進しているかを調べるために、野生型マウス(WT)およびhCST1-Tgマウスから鼻組織を回収し、リアルタイムPCRおよび免疫染色を用いてZO-1およびClaudin-1の発現を比較した。WTおよびhCST1-TgマウスにおいてZO-1およびClaudin-1の発現レベルに差は認められなかった。 2)Cystatin SNの花粉由来プロテアーゼに対する阻害効果について スギ花粉抽出液とプロテアーゼの基質であるZ-Leu-Arg-MCA (Z-LR-MCA) をRecombinant hCST1 (rhCST1)の存在下もしくは非存在下でインキュベートし、プロテアーゼ活性により基質から放出される7-amino-4-methylcoumarin (AMC) の蛍光強度を測定することでプロテアーゼ活性を評価した。スギ花粉の有するプロテアーゼ活性はrhCST1と共にインキュベートすることで顕著に抑制された。以上の結果から、Cystatin SNは直接タイトジャンクション構成タンパク質の発現を促進することで上皮バリア機能を高めるのではなく、スギ花粉中のプロテアーゼを阻害することで上皮バリアを保護していることが明らかになった。
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