研究課題/領域番号 |
17K15739
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研究機関 | 国立研究開発法人国立国際医療研究センター |
研究代表者 |
生谷 尚士 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 上級研究員 (40513718)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 2型自然リンパ球(ILC2) / 肺動脈性肺高血圧症 / 好酸球 / IL-33 / IL-5 |
研究実績の概要 |
本研究は難病に指定される肺動脈性肺高血圧症(PAH)の発症機序の解明と新規治療法開発の基盤を得ることを目的としている。これまでの研究成果を平成29年度に学術誌(Ikutani et al, JCI Insight)にて報告した。今回、申請者が開発した肺動脈肥厚の動物モデルとその解析で得られた成果を発表し、肺動脈肥厚に白血球の一種である2型自然リンパ球(ILC2)が関与することを明らかにした。ILC2が動脈肥厚を引き起こすという報告は過去に無く、全く新しい視点から発症機序の解明にアプローチすることが可能となった。 本動物モデルではインターロイキン―33(IL-33)の長期投与によってヒトPAHでみられる肥厚血管に酷似した肺動脈肥厚を誘導することが可能である。この血管肥厚にはILC2の血管周囲への移行とIL-5の産生増強、それに伴う好酸球の集積が必須であることを明らかにした。また、既存のPAH治療薬に本動物モデルで誘導される血管肥厚を抑止する効果があることも確認している。さらに、この治療薬はILC2の機能を直接的に抑制していることを証明した。ヒトPAHの病理像ではILC2や好酸球はみとめられない。しかし、これはこれらの細胞が時間経過に伴い血管から離れていき、末期の状態ではほぼ存在しないためである可能性を見出し、肥厚の初期段階が重要であることを指摘した。 肺動脈肥厚の発生にはILC2の血管周囲への移行が起点となると考えられる。そのため本年度はILC2の動態解析を中心に研究を行った。この肥厚血管の周囲を観察すると、特定の物質の蓄積が観察された。現在はILC2に発現するそれら物質に対するレセプターの解析に注力している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に沿っておおむね順調に推移している。平成29年度はILC2の移行メカニズムに焦点を当てた研究を計画し、実行した。ILC2を含めた白血球の移動にはケモカインとそれらに対するレセプターや細胞間接着分子などが深く関与する。本年度は肥厚血管周囲を観察し、特定のタンパク質が蓄積していることを確認した。ILC2にはこれらに対するレセプターが発現することを確認している。現在はこれらレセプターに対する阻害実験を行い、その影響を検証している。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度の研究計画に大きな変更は必要なく、当初予定していた計画に従い研究を遂行する。来年度は疾患への関与が疑われる遺伝子の改変マウスの解析を行う計画である。計画にある遺伝子改変マウスの作製や入手はすでに完了している。これらのマウスに肺動脈肥厚モデルを用い肥厚を誘導し、ILC2や好酸球の変化や症状の程度を観察する。これらの結果を基に候補遺伝子の関与の有無を明らかにする計画である。
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