2017年は、医科歯科連携に従事する病院歯科衛生士の経験や認識の調査結果をまとめ国際誌に掲載した。高学年の歯科衛生士学生90名への質問紙調査と8名へのインタビュー調査を実施した。2018年は、歯科衛生士学生への調査結果をまとめるとともに、臨床実習を経験した医学生10名に医科歯科連携の経験と認識に関するインタビュー調査を実施した。両者の多職種連携(IPW)やお互いの専門職としての役割、連携に関わる障壁の認識の違いが明らかとなり、その改善に向けた卒前と卒後をつなぐ多職種連携教育(IPE)の必要性を提言した。最終年度である2019年は、歯科衛生士学生と医学生を対象にした調査結果を国際学会で発表した。また、この研究成果を基盤として、医学・歯学教育者を含む全国の医療者教育者対象のワークショップ「IPWと卒前IPEとをつなげる―地域コミュニティの文脈から考える」を企画・開催した。ワークショップは、IPWの実践者と卒前教育者の各々の立場や視点を理解し、卒前教育から卒後の実践への移行期におけるIPE/IPWの在り方を考えることを目的とした。具体的には、参加者自身のIPEやIPWの経験を共有しながら、教育現場と臨床現場の実情を把握する機会を設け、その実情を踏まえて卒前IPEとIPW間のギャップを埋める教育の在り方を議論した。医療現場の視点からは、患者への責任性やチームメンバーの特性の多様性、文脈に即した対応の仕方、組織とチームとの関係性の考慮の重要性、卒前教育の視点からは、現場での連携の実際や各職種が果たすべき役割を学習者に意識させ学ばせる重要性が強調された。また、学生を送り出す卒前教育チームと受け入れる医療機関チームに分かれて、地域の病院でのIPE実習を構築するワークを行なった。両チームは数回の交渉を行ないながら教育プログラム案を構築し、医科歯科連携教育の新たな提言をすることができた。
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