研究実績の概要 |
平成27年度より京都大学では毎年4月に全新入生3,000人に対してCPR教育を実施している。本研究では、CPR教育を受けた学生を対象に長期的な追跡を行い、心停止やそれに準ずる現場に遭遇した際、救命活動(CPRの実施とAEDの使用)を行えたか否かを評価しCPR教育の効果を評価することが目的である。 H29年度は、H27年度およびH28年度に京都大学に入学した学部2年生および3年生合計約6,000人を対象に、学生健康健診の機会に質問票調査を行った。入学時に行ったCPR講習会受講以降、心停止やそれに準ずる現場の遭遇時における救命活動(倒れている人への声掛け、119番通報、AED確保、CPRの実施、AEDの使用、救急車の誘導、救急隊への情報提供など)実施の有無を評価した。 対象学生5,933名のうち2616名から回答を得ることができた(有効回答割合44.1%)。人が倒れた場面に遭遇した頻度を、観察人年を用いて算出したところ、4/100人/年であり、心停止の場面に遭遇した頻度は2.3/100人/年であった。人が倒れた場面に遭遇したうち48.7%の学生が何らかの救命処置を行っており、そのうち胸骨圧迫を行っていたものは26.7%、AEDを使っていたものは24.4%であった。胸骨圧迫を実施しなかったり、AEDを使用しなかった理由で最も多かったものは、「他の人が既に行っていた」からという理由であった。 今回、CPR教育を受けた人を長期的にフォローし、人が倒れた現場に遭遇する頻度と、その時何か行動を起こすことが出来たか否かを明らかにすることが出来た。我々が知る限り、倒れている人や心停止に大学生が遭遇する頻度を初めて明らかにした研究である。
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