研究実績の概要 |
平成27年度より京都大学では毎年4月に全新入生3,000人に対して心肺蘇生(以下CPR)教育を実施している。本研究では、CPR教育を受けた学生を対象に長期的な追跡を行い、心停止やそれに準ずる現場に遭遇した際、救命活動(CPRの実施とAEDの使用)を行えたか否かを評価しCPR教育の効果を評価することが目的である。 H30年度は、H27年度~H29年度に京都大学に入学した学部2~4年生合計約9,000人を対象に、4月上旬に行われる学生健康健診の機会に質問票調査を行った。入学時に行ったCPR講習会受講以降、心停止やそれに準ずる現場の遭遇時の有無、人が倒れた場面の状況、および、その場面における学生の救命活動(倒れている人への声掛け、119番通報など)実施の有無を評価した。 対象学生8,852名のうち健康診断を受診した7,595名に対して質問紙を配布し、5,549名から回答を得ることができた(有効回答割合73.1%)。人が倒れた場面に遭遇した頻度を、観察人年を用いて算出したところ、2.5/100人/年であり、心停止に遭遇した頻度は1.1/100人/年であった。人が倒れた場面に遭遇した51.2%の学生が何らかの救命処置を行っており、そのうち胸骨圧迫を行っていたものは15.3%、AEDを使っていたものは13.5%であった。胸骨圧迫を実施しなかったり、AEDを使用しなかった理由で最も多かったものは、「他の人が既に行っていた」からという理由であった。 今回、CPR教育を受けた人を長期的にフォローし、人が倒れた現場に遭遇する頻度を明らかにした。学生が人が倒れた現場で行動しなかった理由の最たるものが「他の人が行っていた」という理由であったため、今後のCPR教育において、他者が行っていたとしても人の手が必要な場合があるので、何か助けが必要ないか声を掛ける重要性を強調する教育プログラムの改善につなげる。
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